みんなの世界を救えるのなら【途中ではありますが】
森ノ内 原 (前:言羽 ゲン
第一章
第一章 世界の終わり
『えっ…。えぇぇぇぇ!』
忙しいアルバイトから帰る途中だった。なにやら夜なのにも関わらず、やけに空が明るく広大な光に包まれている気がした。気になって空を見上げる。
『これ…。現実!?』
空からダンジョンRPGゲームの魔法使いが出すような金色に光る魔法陣のような紋章が現れた。
その紋章は丁度、遠真の頭上から一気に空一面に広がっていき、明るさを増していく。
遠真が眩しいと感じ、腕で視界を隠す。数秒ほど続いたと思ったら、今度は紋章がだんだん薄くなくなっていった。
『何だったんだよ。今の。写メ撮ったきゃよかった』
珍しいものを見たのを、自分のSNSに投稿したらどんな反応するか。恐らく、あんな奇妙な紋章他に見た人もいるかもしれない。そんなこと考えながら、写真を撮らなかったことを少しばかり後悔していた。
何もなくなった空から視線を降ろし、家に向かう進行方向に視線を変える。
『……。えっ!』
また驚く遠真。目の前に何やら奇妙なさっきと同じ光りに包まれた、小さな物体が数メートルの所にフワフワと浮いているのが見える。恐る恐るその光に近づくと、どんどんと光りの加減が強くなっている。
『何だよこれ。妖精?』
桃色の両翼の生えた鼠かハムスターに似た動物が遠真の目の前に浮いている。
丁度手のひらに収まるくらいのその小さな動物を両手で包み込み用にキャッチする。
その動物は全体的に白い獣の毛が生えており、静かに眠っている様子で、羽が先程見た通り桃色の羽に所々紋章らしき模様が見える。
獣の姿をした天使?そんな風なことを頭に想像しながら、遠真は首を左に傾げる。
光がなくなって、その天使か獣かわからない動物はゆっくりと目を開ける。
片目が普通の動物の目と変わらないが、もう片方が黄色い瞳をしてる。オッドアイと呼ばれる類のものだろう。
『あっ。目が覚めたか?』
『ここは…?』
えっ!?喋った!思わずその動物の言動に遠真は目を見開く。そしてじっと目を見つめる。
オスかメスかわからない声の動物にはなんだかノイズがかかっていて、反響する様に聞こえた。
『あっ!アタシは一体何を!?』
『やっぱり喋ってんじゃん!?何だこいつ!』
『貴方は…。もしかして別世界に生きてるクリーチャー!ではない!?』
『え、えぇと。まず、何が起きてるのか少し整理を』
『貴方、名前は!』
動物が我に帰ったかのように真面目な顔になった。そして唐突に遠真の名前を聞く。
『アタシの戦闘能力を貴方に授ける!アタシに協力して欲しい!』
『えぇと。ちょっと話が追いつかないなぁ』
まずこの動物があの光の紋章と何か関係あるのか。戦闘能力?とやらが何なのか。
国民の休日の朝方にやってる、女の子達が戦い世界を救うような番組の最初のシーンみたいな展開にどことなく似ているようで似ていないこの状況。遠真は頭に何度も処理を続けるが、整理できない状況にあった。
何回も遠真にお願いをする動物に、じっと視線が合う。
『き、君の名前から…』
話を聞こうとしたその矢先。遠真の背後に立つ夜の街灯を照らす電柱から大きな衝撃と音がした。遠真はその風圧に押し出される。そして地面に叩き落とされたかのような勢いで吹き飛ばされる。
『いってぇ!何?』
『大丈夫?』
動物が遠真に話しかけると、動物は遠真の手から降りて、羽を広げた。そしてフワフワと浮かぶ。
遠真が目の前に集中すると、そこにいたのは!
『何だよ、アイツは』
『あの怪物が、クリーチャーだよ』
目の前にいたのは、これまた奇妙な動きを見せる、ドロドロとした二足歩行方の生命体だった。顔の部分は赤い目のようなものが無数に存在し、巨大な獣の爪のようなものが生えた手。筋肉質な脚。それに大食いしそうな怪獣の口。
どんどんと遠真に近寄ってくるそのクリーチャーとやらが、壊した街灯の電光を踏み潰す。カジャンと音が鳴るとその音をかき消すかのように雄叫びを上げた。
『いやいやいやいや。もう勘弁しろよ。こんなやつに俺は殺されて…』
さっきの衝撃で腕から血が流れてる遠真。左腕が痛むのを右手で抑えながらゆっくり後ろに下がっていく。お尻尻を引きずりながらどんどんと下がって行く遠真の前に、あの小さな動物が尋ねる。
『ねぇ。貴方の名前。教えて!』
『えっ!』
『名前だ。早く!』
遠真は、目の前のクリーチャーとやらに視線を変えた後にもう一度羽の生えた動物に視線を戻す。
『遠…真』
『トオマだな。アタシと融合して!』
『えっ!ちょっ!待て!』
『トオマ。アタシが貴方を世界終末と戦う戦士に任命する。アタシの目を見て!』
遠真は言う通りに従うしかなかった。
『戦力増術!融合!』
『うわっ!』
また目の前が眩しくなり、思わず腕で視界を隠した。
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