第11話  

「先ほどはありがとうございました。」

数分後、三葉が戻ってきた。

「別にいいよ。てか、早く仕事やらないと終わらなくなるぞ」

「あっ…忘れてた…」

いや、忘れるなよ。



「意外と今日は早く終わったな」

今日は、少し調子がよく1時間ほど早く終わることができた。もう0時は回っているのだが。この部屋に残っているのは三葉と二人になってしまった。三葉もまじめにやっているので、邪魔をしてはいけないが、さすがに1人にするのはかわいそうなので、何をしようかと考える。

『よし!ゲームをしよう』

小さな声でつぶやいた。上司もいないのでばれても大丈夫だろう。

そっとスマホを出しアイコンをタップする。音量は0にしてあるので大丈夫だ。

オープンワールドで、キャラも多彩なこのゲームは、プレイしていると時間も忘れてしまう。

『デイリーやらなきゃ。あ!イベントやってる』

『よっしゃ倒した』

右上に通知が来た。これはフレンドがやっているという証拠だ。

『あ、クロさんだ。久しぶりだ』

早速チャット機能を使う。


kou《久しぶりです!クロさん!》

クロ《kouか!ひさしぶりだな》


ちなみにkouとは浩平の“こう”からとったのだ。

kou《最近忙しくて全くできなくて…クロさんやりこんでますねえ》

クロ《まあ、こっちも忙しくてデイリー消化と少しのイベントくらいかな》


よほど効率がいいのか、装備はすべて最高ランクの星5になっている。

kou《ちょっとこのボス倒せなくて手伝ってもらえませんか?》

クロ《ああ。このボスね。2人じゃないときついね》


数十分後、2人はボスを倒すことができた。

「「よっしゃー!」」

「「は?」」

ここが会社内だったというのを忘れて大声を出してしまってやばい!と思った瞬間隣からも同じ声が。

そして、どちらもスマホを手にしている。

「もしかして…」

「クロさん?」

「kou!?」

「ちょっとお互いにスマホの画面見せようか」

スマホを差し出すと、『Win!』という文字がどちらも表示されており、ドロップしている物の種類も同じだ。

「お前がkouだったのか…ですか」

「クロさんだったんですか…」

会社では浩平が先輩だが、ゲーム内では、三葉が先輩のようなものだ。初めたてのころから教えてくれた三葉はむしろ師匠と呼ぶべきか。

「こんな近くにいたんですね!しかも浩平さんだったとは…あ!だからkouか…」

「っていうか、クロさんが三葉だったとは…なんでクロ?」

「三葉だから四葉そしたら、クローバーからのクロって感じです」

「わっかりにく…」

「もうマルチプレイしてやんないぞ!」

「はいすみません調子乗りました。」

立場逆じゃね?三葉の顔を見る限りあちらも思っているだろう。

「すみません。今のはなしにしてくれませんか…ゲームの中と混乱してしまうので」

「ああ。わかったよ」










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