第9話  三葉雫

「よし!まず何を説明するのかわかってるね」

「はい。」

「まず初めに、一応、この会社が何をしているのか、そして、これから何をすればいいのか、最後に電話が来た時の対応ですね」

「対応はまだいいかな。始めたばかりだから手取り足取り教えてやってくれ」

「分かりました」


数時間後…

「そろそろ8時だ。浩平、準備しとけよ」

ここの会社は新入社員があまり来ないので、やめさせるわけにはいかない。

この部屋にいる皆に、緊張が走る。

「お、おはようございます!」

そこから入ってきたのは女性だった。

少し赤みがかったセミロングの黒髪。髪の色と同じような、綺麗な瞳も併せ持っていた。


「こっちで自己紹介してくれるかな。」

「はい」


「よろしくお願いします。三葉雫です。今までは、バイトしかしていなかったので、会社に入るのは初めてです。知らないことはいろいろありますが、これからよろしくお願いします。」

と言い、深々と礼をした。

「これから、君の教育係になる木島浩平だ。」

と部長が言う。

そして俺は、自己紹介をする。

「木島浩平だ。好きなことはゲーム。一応、教育係だ。わからないことがあったら教えてくれ」

少しいらない情報を教える。これで少しでも緊張が解けてくれたらいいのだけど。そもそも緊張しているのかわからないが。

「宜しくお願いします。」

と、やはり感情がつかめない答え方をする。

「まず席に座ろうか」

その席は、俺の隣。何かあったらすぐに教えられるようにって部長が決めたらしい。

「それじゃあ、始めようか」

「はい。」

「これは、こうなって────」


色々教えているうちにもう、昼休憩になってしまった。だが、今日はあまり進んでないので、まだ仕事を続けることにする。

そして、少しわかったっことがある。なぜか俺にだけ冷たい!

何故だ!

「そういえば、何て呼べばいい?」

実をいうと結構不便だった。何となく、名前は呼びにくいし…

「三葉でいいです」

「わかった」

うーん。気まずい。

とりあえず仕事が大量にあることに感謝。

「休憩に入ります」

「おう」


でも、結構覚えは早いし、会社には貢献してくれそうだ。



「はあ…とりあえず半分終わった…」

今はもう8時。すっかり遅くなってしまった。外は暗くなり、皆が帰っていくころだ。

だが、まだ三葉がいたのだ。

おい部長。新人なんだから、帰らせろよ。

「そろそろ帰っていいよ」

「はい。もうすぐ終わるので」

やっと1人で集中できる。

その瞬間三葉は立ちあがった。そして、自動販売機へと近づいていく。

ビックリした…飲み物を買いに行ったのか

はあ…集中、集中!

あれ?何で飲み物?そろそろ終わるって言ってなかったっけ。

まあいいや。


「ああ…終わった!」

もう、1時か…

「帰る準備をするか…」そう思った瞬間、俺の机に瓶が置いてあった。

エナジードリンクだ。


もしかして、三葉が置いていったのか…?

そう思いながら、手に取ると付箋が貼ってあった。

『私のせいで遅くなってすみません。良ければ、どうぞ。』と書かれてあった。

優しいのかよ。


どっちが本性なのか分らなくなる浩平だった────





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