真実が分かったとしても

第13話  過去

俺は中学3年生の時に事故にあっていた。

それは、十数年前の話…


「なあ、悠。今日お前の家にいってもいいか?」

「いいよ」

「いつもありがとな。」

「んじゃ、今日は何する?」

「ゲームだろ!」

「まあ、わかってたけどな!」

中学2年生のころ、俺は悠といつも遊んでいた。悠とはすごく気が合って毎週遊んでいた。


「ただいまー!」

「おじゃましまーす」

「お、おかえり。いま、お母さんは買い物にいってる」

悠にはちょっと人見知りな妹がいた。

その子は、いつも悠の後ろに隠れたり、壁から顔を出したりと、あまり心を開いてくれなかった。

「今日は何やる?」

「んー。どれも楽しいけどなあ…」


「お邪魔しました。」

「ばいばーい!また明日」

帰るころには、もう夕方になっていた。「楽しかったな」と思いながら帰っていく。

「あ。悠の妹だ」

少し先に悠の妹がいた。漫画でも買いに行っていたのだろうか。持っている袋の中に本らしきものが見えた。

声をかけようか迷っていたら、悠の妹が、本を落としてしまった。

「大丈夫?」

「あ。浩平さん…大丈夫です。」

「たくさん落としちゃったな」そう思いながら本を拾うのを手伝った。

「あ、ありがとうございました。」

「これくらい大丈夫だよ」

そして、立ち上がろうとした瞬間。右側から車が曲がってきた。

「危ない!」

反射的に、悠の妹を歩道側に押し出した。

だがその瞬間、自分は車にはねられる。そう感じた。

ドンと、鈍い音がした。

あれ、悠の妹の名前ってなんだっけ?

ああ…

「柚葉ちゃん…だっけ、悠を頼んだぞ」

俺…死んだかも。


目が覚めるとそこには、知らない天井があった。

「浩平大丈夫か?」

「どうしたの?お父さん。ってか、何で病院にいるの?」

「覚えていないのか?」

「何が?」

「浩平!大丈夫か!!」

「誰…ですか…?」

「悠君だぞ!いつも遊んでいた」

「遊んでいた?」

そんな奴いたっけ。というか、何も思い出せない。


俺は、悠とその妹の柚葉の存在を忘れていた。

だからあの時、泣いていたのか。

そして、もう一つ思い出した。俺には妹がいない────

それじゃあ……

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