Play12☘「再出航」
✿『あと何が必要なんだっけ?』
☀『木材は揃ってるよ』
♨『布もオッケーだ』
☘『縄1個は出来てる』
✿『じゃあ縄二つね……あ、貰えるじゃん』
鳥撃ちは森の中にいた。周囲に獣の気配はなく、いくつか木が切り倒されている。
先ほどまで素材集めをしていたようだが、その作業を終わらせ、メニュー画面を開いた。
島の全体マップを確認すると、自身の現在地を表示する三角マーカーの外に、点滅する円形マーカーが三つ存在していた。それらは同盟メンバーの位置だ。
その地図によれば、山羊追いは港、羊飼いは平原、街守りは街にいるらしい。
♨『揃ったんなら一旦集まるか?』
☘『じゃあ港のおひるんとこで』
✿『りょーかーい』
☀『みんなきてくれー』
山羊追いを示す円形マーカーの一つを選択すると、突然BGMが変わり、メニュー画面を閉じれば景色も別のものになっていた。
通りを小人達が行き交い、出店で賑わっている。海に浮かぶ船には乗組員が乗りこみ作業をしていて、港は今日も賑やかだ。
鳥撃ちの目の前には山羊追いと羊飼い、それと羊がいて、少し遅れて街守りが現れる。
☀『船作るのクロちゃんに任せていいよね?』
☘『うい』
こちらを見てくる三人に鳥撃ちがサムズアップを見せる。それに続くように画面上部からメッセージが降って来た。
——≪お昼はnoon≫さんから≪ブナの木・悪×7≫が渡されました。
——受け取る/受け取らない。
選択肢から≪受け取る≫を選択すると、立て続けに≪ぬるめ≫から≪布・劣×3≫、≪サクラ≫から≪縄・悪×2≫が送られ、どちらも同様に受け取った。
鳥撃ちはそれからメニュー画面を開き、≪図鑑≫≪アイテム≫≪レシピ≫と遷移し、≪作成レシピ・船・壱≫を選択する。すると詳細が表示され、そこに記される三つのアイテムの内の一つを作り出した。
——≪ヨット・悪≫を作成しました。
メニュー画面に重なってメッセージがポップアップする。それをすぐに閉じ、メニュー画面も閉じた。
☘『作った』
♨『じゃーまー、こっからどうするかだよなー』
✿『あー、このまま海に出てもまた遭難するかもだっけ』
☀『そうだねー』
☘『……思いついたんだけど、反対側に行けばいいんじゃね? 多分今まで島を見つけられてないのって港から直進するからでしょ。なら港とは反対側、遺跡方面から船を出したらどっかにたどり着けるはず』
✿『なるほどー』
♨『えー、さすがにタイニーたちそこまで馬鹿じゃないだろ? ある程度見て回らないか普通?』
☘『いやきっと馬鹿』
首をかしげる羊飼いに対し、鳥撃ちがアッパーを繰り出した。しかし、プレイヤー同士のダメージ判定はないので、顔面を拳がすり抜ける。
☘『というわけでゴー。今回はあたしが防衛する』
♨『微妙に納得いかねぇけどなぁ』
✿『結局、港から船出すん? 遺跡の方まで行った方が良いんじゃない?』
☘『かもしれんけど、めんどい。あと出来た船早く乗りたい』
☀『ははは、クロちゃんらしいねー』
意見がまとまったようで、歩き出した鳥撃ちに他の三人もついていく。
鳥撃ちは桟橋へとつくと、早速先ほど作ったヨットを水面に浮かべた。その大きさは、以前のイカダよりも二回りほど大きい。
☀『俺とサクラちゃんはさっきと一緒で良いよね?』
♨『オレが舵取りか』
☘『船の安全は任せろぃ』
鳥撃ちは真っ先に乗り込み、船の中央に立つ。役割は≪防衛≫だ。そこに立った途端から、弓を構えて戦闘態勢を取っている。
続いて、羊飼いが船尾に陣取り≪舵取り≫を担当。山羊追いと街守りが側方で≪漕ぎ手≫に回った。
イカダの時よりも大きな船体のため、スペースには空きがある。羊も今回はちゃんと乗船していた。
☘『よし、船を出せー』
漕ぎ手がタイミングよくオールを動かすと、ゆっくりとヨットが動き始める。それと同時に帆が大きく張られ、イカダ以上の速度を生み出した。
ヨットは少し進むと右へと回りだし、港を横切っていく。そして端に辿り着くとまた右へと曲がり、島を回り込むように進んでいった。
♨『ほんとにこっちに次の島があんのかねー』
☘『船長を信じろ』
☀『実を言えば俺、港で情報収集した時、似た話聞いたけどねー。反対側に行かないのは馬鹿って言うより危険だかららしいよ』
♨『なあ、なんでそれ先に言わないの?』
☀『言わなくても気付いたじゃん?』
☘『そういうとこがマジウザい』
☀『うはー、傷ついたー』
ヨットは島の外周沿いに進んでいく。右手に平原が見えるが、岸壁になっていて停泊は出来そうにない。しばらくして遺跡が見えてきたが、そこも水没する建造物のせいで港を作れそうにはなかった。
更には、陸地でこちらを睨んで来る大きな狼が複数いる。
羊が恐ろしい視線に体を震わしていると、不意に船上に影が二つ増えた。
✿『こっち側危険って言ってたけど、この船もつん?』
☘『ぬるぬるみたいな間抜けはしないぜ』
♨『いや、相性だろあれ』
敵は以前にも襲ってきたカモメだ。二羽いるそれらは、まずは様子見と距離を保って追従していたが、鳥撃ちがあっさり矢で貫いた。
それで激怒したのか、もう一方が船体めがけて襲ってくる。
だがその攻撃を、羊が体当たりでしのいで見せた。
♨『羊役に立つじゃん!?』
☀『定員オーバーで泳がされてたから使えなかったんかもね』
☘『だとしたらむしろ羊飼いは防衛向きなのでは?』
♨『本体は向いてないから、他のやれる上に防衛出来るってのが利点じゃね?』
✿『どっちでもいいけど、割といい感じだねー』
羊の攻撃でよろめいたカモメも鳥撃ちが矢を放って海に落とす。
既に島は後方に行き、画面にも映らなくなっていた。それと同時に、簡易マップにポツポツと小さな陸地らしいものが増えてきている。
✿『明らかになんか増えてるね』
☘『こっちで間違いない』
♨『お、なんか見え始めてね?』
カメラを動かして、水平線の方を見てみると、そこには何やら大きなシルエットが浮かび上がっていた。
そのシルエットは、近づくごとに鮮明になっていく。
♨『来たぞ次の島!』
☀『デカいねー』
木々に家屋に獣。
その島が内包するそれらは、どれもが、今まで見て来たものよりも大きかった。
——TIPS——
【作成レシピ・船】
・船関連のアイテムを作成することが出来るレシピ。≪壱≫で作成可能なのは≪イカダ≫≪強化イカダ≫≪ヨット≫の三つ。それぞれの品質は、使用素材によって変動する。
・≪壱≫以外にも≪弐≫や≪参≫など複数存在し、ストーリー進行やサブクエスト達成などで手に入る。数字が大きいレシピ程良質なアイテムを作成できる。
・≪イカダ≫…耐久‐悪。速度‐悪。定員‐4名。必要素材‐木材×5、蔦×5
・≪強化イカダ≫…耐久‐劣。速度‐悪。定員‐5名。必要素材‐木材×7、縄×3
・≪ヨット≫…耐久‐劣。速度‐劣。定員‐8名。必要素材‐木材×10、縄×3、布×3
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