Play14✿「上陸」

 ——獣借り・タク


 そう表示される名前は、髪に羽飾りを刺し草葉を束ねた衣類をまとうタイニーのもの。

 彼は傷ついた体ながらも毅然と立ち、こちらをじっと見つめて言った。


「さきは すまなかった」


 パクパクと動く口に合わせて発される声はどことなくカタコトだ。

 彼はあまり言葉が得意でないながらも、手ぶりを使いながら謝罪の意を示す。


「わたしたちは けものと くらしている だから ころされるの つごうわるい」


♨『つまり借りぐらしだと』

☘『ほうアリエッティだと』


 それから獣借りは、一連の行動についての弁解を行った。

 彼は、≪同盟・ぬるいお昼の黒桜≫が目指していたあの大きな島に住んでいるらしい。その島では、獣と共存をしながら生活を営んでいると。

 しかし獣の方は、タイニーが近づいて来ればすぐ襲ってくる。そこで獣借りは、警戒されにくい格好で、ひっそりと獣達の大きな体を利用しているようだ。

 獣借りのコネクションはかなり少ないらしく、常に獣達に囲われた生活のために警戒心が高い。そのために島外からの侵入者を厳しく見張っている。大カモメの上に乗っていたのも偵察の一環だ。

 とは言え獣を操れるわけではない。例え外からやって来た船に小人が乗っていようとも、大カモメが敵意を向ければ、その邪魔をすることは出来なかった。

 ただし今回は、その重宝している大カモメの危機を察して姿を見せた。しかしその結果、自らも敵意を向けられ、挙句大カモメは倒されてしまったのだが。


☀『カモメ倒さないルートとかもあるんかな』

☘『逆にどっちも殺すルートもありそう』


 獣借りは再度、大カモメを倒す邪魔をしたことを詫び、≪同盟・ぬるいお昼の黒桜≫の面々を同胞と認めると告げた。

 彼はヨットの上に立ちながら、大きくそびえる島を指さす。


「あのしまには おおきなけものが おおくいる けど あぶないの すくない 」


 どうやら獣借りは道案内を買って出ようとしてくれているらしい。それから船員たちは各々の役割に戻って、船を進め始め、一度暗転すると島に着岸していた。


✿『おっきー』

☀『草食系の獣ばっかだね』


 ——???


 島の全体像が映される。その名前はまだ明かされないようだ。

 以前の島よりも二回りほど大きく、陸地には牛やアルパカなど、温厚そうな獣達が足元の草を食んでいる。更には森の中で猿が木々を跳び回り、小人達の小さな集落も映された。

 この世界の島には砂浜は少ないようで、ヨットが着けた場所は岩礁だ。船底をこすってそうなものだが、大丈夫らしい。

 四人の小人が、物珍しそうにあたりを見渡していると、獣借りが「こっち」と頭上に吹き出しを表示して、一人で走り出した。


♨『どうする? ここら辺で終わっとくか?』

✿『区切りいいとこまでやっとこ』

☘『なんか拠点にでも案内してくれるでしょ』

☀『罠に嵌められたりしないかなー』


 四人は一瞬だけ立ち止まるも、すぐに先導する獣借りを追いかる。海に浮かんだままだったヨットは鳥撃ちが手早く回収した。

 獣借りが進む場所は、周囲が木々で生い茂る森の中だ。そこは鬱蒼としていて、ジャングルという表現の方が相応しいかもしれない。

 ジャングルの中には時折獣が姿を現す。ほとんどは視線を向けてくるだけでどこかへと去っていったが、猿だけは鳴き声を発しながら攻撃を仕掛けて来た。

 熟練度は8。油断した羊飼いはダメージを受け、大カモメ戦の体力が回復していないこともあり窮地に陥ったが、鳥撃ちの矢が相変わらず素早く仕留めてくれた。

 それからしばらくして、木々が開けてくる。


♨『お、見えて来たぞ』

☀『ちっちゃいなー』


 それは島に上陸した際にも、チラリと映された集落だった。

 寝泊まりするだけのテントがいくつか並び、畑や調理場もある。中央には火が焚かれていた。

 ざっと見ても住民は10人もいないのではないかという手狭さだ。

 その集落の入り口で、獣借りは待っていた。


「ここ わたしたちの しゅうらく」


 途端に獣借りが指笛を鳴らすと、周囲から似た格好の小人が6人ほど集まってくる。彼らはそれぞれに狩りや畑仕事の道具を手に持っていた。


「これ しまにいる たいにー ぜんぶ」


 そのセリフと似た格好から、≪獣借り≫というコネクションに属するタイニーたちなのだろう。


♨『マジでこんだけなのか?』

✿『ここの島、初めの所より大きいのにね』

☘『生物がすみ分けたみたいなこと言ってたし、本来はここ、獣達しか住んでなかったんじゃない?』

☀『あーかもねー』


 獣借りはコネクションの6人を仕事に戻らせると、一歩近づいて問いかけてくる。


「おまえたち どこからきたか おしえてほしい」

 ——教える/教えない


 悩むことなく≪教える≫を選択すると、≪教えない≫の文字が暗くなる。プレイヤーたちは言葉を発していないが、獣借りは相槌を見せた。


「そこには そんなにたいにー いるのか なら わたしたち つれていってほしい」


 その嘆願に重なってウィンドウが現れ、そこに依頼内容が表示された。


 ——獣借りを島へと案内しよう。獣借りのコネクションは全部で7人。7人に加え、同盟全員分が乗れるだけの船を用意しないと物語を進められない。



♨『7人ってことは俺達加え、11人分。いや羊入れたら12か?』

☘『ヨットは8人乗れる』

☀『イカダ一つ作ればいい感じかな?』

✿『イカダ4人乗りだったもんね』


 会話は島へ連れていく依頼で終わりのようで、操作権が戻ってくる。すると早速4人はそれぞれに動き出して、集落内の物色を始めた。


✿『どういう感じで分担する?』

☀『クロちゃんと羊は防衛向きだから、別々にするのがいいんじゃない?』

♨『じゃあオレがイカダ作って、誰か一人乗って、獣借りの一人乗せる感じだな』

✿『うち一緒に乗ろーか』

☘『こっちにじゃあ、おひるんと6人分乗せればいいか。けど働くのあいつら?』

♨『こういうイベントの奴って大体強いだろ』


 山羊追いと鳥撃ちは集落の施設をチェックし、街守りは住民たち一人一人に話しかけている。それぞれ落とし物を見つけたり、情報を得たりと成果はあるようだ。

 羊飼いは集落から離れて周囲のアイテム採取へと出かけていた。


♨『オレ木集めるけ、蔦か縄そろえてくれ』

✿『分かったー』

☘『適当に集めろー』

☀『はーい』





——TIPS——

【獣借り】

・新たに訪れた島で生活を営んでいたタイニー。獣の巨体を利用して移動したり、強い獣の縄張りにこっそりと住処を作ったりして安全を確保している。

・その姿は野性的で、獣の一部を装飾品に着けていることが多い。頭に付ける羽飾りには鳥系の獣からの敵意を和らげる効果がある。その他にも、独特な狩り道具を製作している。獣借りとの好感度を上げればそう言ったアイテムを貰えるかもしれない。

・遭遇時点でのコネクションの総数は7人。全体的に知性が低いが、その代わりに身体能力は高い。島内には他のタイニーはいないようで、プレイヤーが初めての他コネクションとの関りとなった。

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