Play6✿「勧誘」
♨『あれ? いつの間にか熟練度3になってんじゃん』
✿『さっきの鹿でしょ? 熊も倒せてたら良かったけどねー』
☀『ぬるめ以外は1ずつ上がった感じか』
森での強敵戦闘をどうにかやり過ごした《同盟・ぬるいお昼の黒桜》一行は、街を突っ切り平原にやって来ていた。
平原は、広大な野原がしばらく続く土地で、見通しが良いことからも生息する獣たちは比較的危険性の低い小柄な体格が多く、狩りに慣れていない小人達がまず向かう場所になっている。
街守りが訪れるのは二度目だ。以前はお試し感覚で散策して、軽く狩りや採取を行った。
画面の奥で小さなネズミと格闘している一人のタイニーは、過去の街守りと同じ状況だろう。
✿『あ、はぐれだ』
♨『お、マジか!?』
周囲を見渡していると岩陰に隠れているタイニーを見つけて駆け寄る。するとすぐに羊飼いも追従してきた。
岩陰に隠れているタイニーは、みすぼらしい格好をしていた。まとうものは襤褸で、瞳はうつろに一点を見つめている。体の所々にも汚れが見えて、表情からは知性を感じられない。
♨『オレに勧誘させてくれ! オレコネクション0なんだよ!』
挙手をしながらピョンピョンと跳ねる羊飼いを横目に、街守りはうつろな目のタイニー≪はぐれ≫に話かけた。するとメッセージが出現する。
——≪はぐれ≫を勧誘しますか? はい/いいえ
≪はい≫を選択すると頭上に≪コネクション+1≫と表示された。
♨『おいサクラ抜け駆けすんなよ!? って、おん? オレもプラスされてんぞ?』
✿『皆に行く感じかー』
☘『親切設計』
♨『……結果オーライではあるけど、なんか釈然としないんだが?』
横取りされた羊飼いが悲しそうに佇むが、街守りは気にせずその場を離れ、山羊追いと鳥撃ちの元へ集まった。
☀『じゃあ、もうちょっとここら辺探索する?』
☘『熟練度上げとこ。せめて全員5以上に』
♨『だなー。ここら辺弱いし、一人ずつで狩りすれば効率良いんじゃね? 経験値って同盟にも分配されるんだろ?』
✿『うちはそれでいいと思う』
集合した四人はすぐにそれぞれ散会して、平原を歩き回った。
なんとなく南方向にフラーと進んだ街守りは、正面に≪犬・熟練度2≫がいるのを見つける。すぐに剣と盾を構えるが、その後ろの岩陰にまた≪はぐれ≫を見つけて、一旦犬を無視し、素早く勧誘を行う。
頭上に≪コネクション+1≫。
その隙をついて、犬が襲い掛かってきて僅かにダメージを負ってしまうが、すぐさま剣を抜いて4度ほど切りつければ、犬は≪犬の毛皮・悪≫に変化した。
それからも≪はぐれ≫勧誘を優先して平原を歩き回っていく。幼気な子供を保護して回っているような行動だ。
♨『さっきからめっちゃコネクション増えんだけど、誰?』
☀『俺は採取しかしてないから違うよ』
♨『そうかぁ……って採取って自分しか得しないよな? もっとみんなのために働けねぇの?』
☀『ぬるめはもうちょっと実入りの良い敵倒してよ』
♨『要求までするとかいい度胸だな!?』
街守りがまた一人の薄汚れたタイニーへ話しかけたその時、頭上に≪経験値+20≫と表示され、続いて熟練度が4へと上昇した。
✿『なんか大物倒した?』
☘『でっかいのいた。60入った』
☀『分配は三分の一かー』
♨『クロさんやっぱりさすがっす!』
それからすぐに熟練度は5へ。その立役者である鳥撃ちは他との差を埋めないまま、熟練度8に到達していた。
——TIPS——
【はぐれ】
・あちこちに一人でいるタイニー。
・薄汚れた身なりをしていて、知性が限りなく低い。意志がほとんどないため、勧誘をされたらすぐにそのコネクションの手足となる。
・どこからやって来たのかは不明。大半が海から流れついた者たちばかり。
・同盟行動中に勧誘すると、自分以外の同盟メンバーのコネクションも増加する。
・見つけにくいような場所に隠れている者もおり、そう言った者を勧誘した際は特定のアイテムを取得することが可能(同盟メンバーには分配されない)。
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