Play10✿「船」

「船の作り方は教えられるが、材料は今なくてな。作るなら自分達で集めてくれ」


 港にある桟橋の上。作業をしていた≪船乗り≫のタイニーに話しかけると、そんな風に告げられた。

 そして会話を終えると彼から≪作成レシピ・船・壱≫が手渡される。


✿『これ作って海に出ればいいってことだよね?』

♨『だろうな。どれどれ何がいるんだ?』

☀『割と手持ちでどうにかなりそうだね』

☘『一番ランクの低い奴なら作れる』


 先ほど手に入れた≪作成レシピ・船・壱≫というアイテムを選択すると、画面に作成可能な船が三つ表示される。それぞれに耐久値や最大速度、乗船人数が決まっているらしく、当然、値が大きいものほど必要素材は希少だったり多くなったりしている。

 残念ながら街守りは素材を持ち合わせていないために、どの船も作れないようだった。


♨『素材集めめんどくさいし、手早く作れるのにしようぜ。一つの船でも最低4人は乗れるんだろ?』

☀『そもそも船って、4人以上いないと乗れないんだったよね。ソロプレイだったらコネクション3人集めないといけないとか』

✿『なんで一人じゃダメなん?』

☀『操縦を手分けしないといけないらしいよ。途中敵も来るからそれの対処する係も必要だとか』

✿『大変そーだね』

☘『作った』


 気づけば鳥撃ちが、近場の桟橋からイカダを浮かべていた。

 サイズは丁度4人が乗れるサイズ。左右にオールが置かれ、船尾にはレバーがある。レバーは水中の板を動かして進行方向を変えるものだ。

 真っ先に乗船した鳥撃ちに街守りも続くと、画面に選択肢が現れた。


 ——漕ぎ手/舵取り/防衛


 ≪舵取り≫の文字だけが暗くなっていて選択不可能となっている。一瞬迷ったが、≪漕ぎ手≫を選び、イカダの左側へと移動してオールを手に取った。


☘『わいが船長』

☀『じゃあ俺は漕ごうかなー』

♨『ちょ、オレが防衛か? 普通クロじゃね?』


 山羊追いは街守りと反対側のオールを手に取り、羊飼いは少し躊躇った様子を見せながらも先頭に立って武器を構えた。


☘『それじゃ出航ー』

♨『クロさんは案の定オレの意見を無視するね……』


 舵取りとなった鳥撃ちが号令を出せば、ゆっくりと船が動き始める。

 すると、街守りの画面下部にゲージが現れた。

 黒枠の中で黄色いバーが伸び縮みしている。どうやら中央部の赤いマーカに合わせると、オールを上手に漕ぐことが出来るらしい。

 最初の内はタイミングをずらしてしまいスピードが出なかったが、数回すれば簡単に合わせられるようになり、3度連続成功させると一時的にゲージが暗転した。


✿『ある程度速度出たらもう漕がなくていいんだ』

☀『じゃあ俺達ちょっと暇になる感じかな』


 ゲージが消えても街守りは必死にオールを漕いでいる。反対側の山羊追いも一緒だ。

 イカダは簡素な造りでは考えられない速度で海上を走っていく。時折進む先に岩や木が突き立っており、それを避けるのが舵を取る鳥撃ちの仕事だった。

 しばらく進んでも、マップに停泊できそうな場所は表示されない。話拾いが言っていたように、すぐ辿り着けるような場所には島がないらしい。

 と、その時、丸太で組まれた足場に影が増えた。


♨『おっ、敵来た。てかこれどうやって倒すんだ?』


 影は徐々に大きくなり、現れたのはカモメだ。熟練度は5と大したことはないが、翼を持つその敵に攻撃を届ける術は限られている。

 しかしカモメは容赦なく、船体へと攻撃を始めた。


♨『いやタイミングむずっ!? やっぱこれクロさんの仕事だって!?』


 飛来するカモメが羊飼いの横を通り過ぎ、船体をついばむ。

 接近に合わせて羊飼いは武器を振るったが、タイミングが合わずに空振り。ダメージを受けた船体は木の破片を撒き散らし、耐久値を減らした。

 耐久値は、体力ゲージの下に船のアイコンと共に現れている。やはり最低ランクの船のようで、そのゲージはかなり短く、一度の攻撃で2割近く削られていた。

 それからも数度、攻撃を仕掛けられ、羊飼いは上手くカウンターを返せない。一度だけ斬撃が羽毛を切り裂いたが、倒しきれず、カモメは未だ追尾してくる。


☘『ぬるぬる、しっかりしてよ。船下ろすよ?』

♨『だからこの立場オレじゃないって言ったよね!? こんな場所じゃ羊まるで役に立たないし!』


 羊飼いのしもべは気づけば船から落ちていて、必死の形相で泳いでついてきていた。

 手間取る羊飼いに手助けをしたくとも、漕ぎ手は持ち場を離れられない。それにダメージを受けるたび船の速度も落ちて、またゲージ合わせを三連続成功させなければいけない。

 最大速度に達したと思えば、また減速。船の耐久値は既に1割を切っている。


☀『ぬるめしっかりしてくれー』

♨『い、いやっ結構シビアなんだがこれ!?』

✿『船壊れたらどうなるん?』

☀『たぶん泳がないといけないんじゃないかなー』


 島から出てしばらく経つ。まだマップにも停泊できそうな場所は見つからない。

 すると、急にイカダが旋回した。

 進行方向には巨大な岩。


☘『よーし。なら、敵の手に落ちる前に自らの手で散ろうじゃないかー』

♨『お、おぉい!? ぶつかるぞ!?』

☘『木っ端みじんだひゃっはー』


 直後、イカダは粉々になった。





——TIPS——

【船】

・島を出るために必要な物。レシピがあれば自分でも作成可能。乗る際には≪舵取り≫に一人、≪漕ぎ手≫に二人、≪防衛≫に一人以上の人員が必要。

・ソロプレイ中の人員はコネクションのタイニーがそれぞれを行い、自動で動く。ただし精度は低い。

・プレイヤーと乗った場合は役割交代は出来ないが、ソロプレイの時は可能。

・乗船してしばらくすると鳥系統の獣から攻撃を受ける。耐久値が0になると船は粉々になって乗組員は海へと投げ出される。コネクションのタイニーが乗っている場合は、それらは失うことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る