第7話:各々の心境 最終局面

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『確かに、君たち3人には私のコスプレを見ることはご褒美にならない。ならば、勝った者には映画館のペアチケットを融通しよう。ーー負けたら、君たちの黒歴史をメッセージアプリで友人にばらまく』


『『『!?』』』



 こんな脅しともとれる子安先輩からの言葉。しかし、今の俺にとっては渡りに船のようなものだった。



 菅原や安倍に言われ、デートでどこに誘うか考え続けたが、放課後になっても答えは出なかった。そんなときに出たこの助け舟は、正直ありがたかった。


 すぐに俺の考えに察した結斗にも頼み、前半から飛ばしてもらった。ーーこうして部活中に、部活と関係のないことで頑張るのは初めてだが、存外、悪くない。


 しかし、今回勝ちたいと思うのは、部員全員同じらしく、前半5分の時点で10対8。いつも以上に接戦の上、少しペースが早い。



 俺たち1年が10人全員経験者なのに対し、2年は13人中8人が初心者で、高校1年間の差はあれど、経験値の差は歴然としてある(高校からは、経験・未経験の差は大きくなる)。


 そのためこうしてチームを学年別に分けた時、どうしても1年が勝つことが多かった。


 だが、今はその差が縮まっている。互いが死にものぐるいで勝ちにいき、互いのオフェンスが互いのディフェンスを少し上回り、こうして普段よりも早い試合展開となっている。




 そんな中、一際高い集中力を見せているのが、天城先輩だ。天城先輩は普段から練習に人一倍意欲的に取り組んでおり、チームでも一番上手い。ドリブル突破からのリング付近での勝負を得意とするインサイドプレイヤーの俺に対して、先輩は技で翻弄してジャンプシュート、もしくはスリーポイントシュートを狙っていくアウトサイドプレイヤー。それも成功率が4,5割と高いため、安平一番のスコアラーは先輩だ。










 そして現在。




「うぉー、天城ナイッシュ!!!!!!」



 天城先輩がまたスリーを決めて、スコアは17対19。ついに逆転を許してしまった。天城先輩、それほどまでに黒歴史を暴かれたくないのか。子安先輩にどんな弱みを握られているんだ…。



「あ〜もう!(点数)抜かれたっ!竜ヶ水リュウ、センタープレイで押し込め!!!!!!」



 1年もう1人のポイントガード、風見かざみ灯哉とうやから指示を出される。風見は自分のドリブルでボールを前線に運ぶタイプのプレイヤーで、周りとパスを繋ぎながら運ぶタイプの結斗とは、逆のスタイルだ。熱くなると視界が狭くなってしまうのが欠点で、スタメンではないが、俺や結斗同様ベンチ入りする実力者でもある。


 残り時間は2分を切った。勝負をかけるならここだ。



「繋げよ」


「!? ……けっ、抜かせッ! いくぞお前らァ!!!!!!」


「「「おうっ!!!!!!」」」



 熱くなりすぎるのは欠点だが、その分爆発力があるのは、結斗にはない長所。事実公式戦でも、勢いが欲しい場面では結斗と交代してプレイし、チームに勢いをもたらしている。2年の先輩たちには悪いが、この勝負、取らせてもらうーー






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 ーーたくっ、珍しくリュウのヤローが乗り気だから、わりと楽勝かと思ったんだけどな。周り連中はともかく、天城サンもやる気になってるのはマジ誤算だぜ。リュウと小鳥遊タカと天城サンはオレらと別なモンが賭かってるらしいが。何賭けてんだ、マジで…。


 正直なところ、部活でモノを賭けるのは誉められたコトじゃねえ。だが、今回はそんなこたぁ横に置いておく。なんせ勝ったヤツらは、子安先輩のコスプレを堪能できる。、是非とも勝ちたい。



 が!



「うぉー、天城ナイッシュ!!!!!!」



 天城サンのスリーが決まって、ついに逆転されちまった! ちくしょう、賭け以前に悔しい!!!!!!



「リュウ、センタープレイで押し込め!!!!!!」



 ここでオレは、リュウにインサイドプレイを指示する。リュウの得意なプレイは、体格とパワーを活かした、いわばゴリ押しスタイル。2年にはスタメンでセンターの石野センパイがいて、加えてリュウについてる天城サンはディフェンスが上手いが、押し込んじまえばかんけぇねぇっ!


 まあ、ここでいつも「冷静になれ」とか言ってくるのがリュウなんだけどn






「繋げよ」






 ……思わずリュウの方を見ると、珍しく不敵な笑みを浮かべていた。はっ、なんだよ、お前も乗り気じゃねえか。


 見れば他のヤツらも気合い十分。ここでやらなきゃ、オトコがすたるよなぁ!






「!? ……けっ、抜かせッ!いくぞお前らァ!!!!!!」


「「「おうっ!!!!!!」」」



 さあ、いくぜ!!!!!!!!!!!!






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 さて、残り2分で2点差。相手は1年、それも風見・竜ヶ水の起爆剤コンビ。今勢いをもっていかれたら、間違いなく負けてしまう。それは避けたい、なんとしても避けたい。さすがにを広められるのは避けたい。






「はっはっはっ! さすがは我がチームの起爆剤、アクセル全開といったところか」



 センターの石野が、気合いを入れ直す1年を見ながら愉快そうに笑う。石野は普段おおらかな性格をしているが、バスケになると目を爛々とぎらつかせ、とても好戦的になる。敵が活気づいても、いや、むしろ相手が勢いづくほどに愉快そうに笑い、込める力が上がっている節がある。安平ウチがいつも自分たちのペースで試合に臨めるのは、石野の存在がとても大きい。



「(竜ヶ水が突っ込んでくるだろうから、)中は頼む、石野」


「(中は)任せろ!」



 こうして短い会話で意思疎通できるのも助かる。



「守るぞみんな! ここが踏ん張りどころだ!」


「「「「おうっ!!!!!!」」」」



 あと2分。凌ぎ切るっ!






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「そんなに見たいのかねえ、私のコスプレ姿」


「むしろなぜ興味が無いと思ったのかな?ほら、さっきからまといが恨めしそうにおっぱい見てるからね?」


「見てませんからね!?」


「うん? 女の子なら、いつでも触ってかまわないが?」


「絶対人前で言わないで下さいね!?!?」

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