第11話:どこ行こう、初めてのデート

 早くに着いちゃっても、映画が15時からであることに変わりはなくって。



「えっと〜、どうしよっか?」


「·····」



 中央駅に入ったはいいけど、ここからどうするかはまったく考えてなかった。せいぜいお昼時の混む時間を避けてランチして、そこから少しブラブラしてから映画、って思ってた。


 そしてそれはりゅ…、、つ、つばさくんも同じだったみたいで、難しい顔をしている。何か、何かアイデアは…。



「……そういえば、まといの服は、いつもどこで買っているんだ」


「え? ああ、これ? これは3階にある女性服売り場で買ってるよ」


「む、そうだったのか。俺はあまり中央駅に来ないから、どこに何があるか、よくわかっていない…」



 つばさくんの言葉に、わたしはなるほど、と思った。


 中央駅は地上6階と地下1階から構成されていて、ファッション系や雑貨、食品売り場のほかに、習い事の教室や歯科医院など、さまざまなお店で賑わっている。


 その一方で、スポーツ店はせいぜい某大手靴メーカーさんくらいのもので、ゲームセンターと本屋さん以外で男子高校生が心踊るものはない。


 ゲームセンターにあまり興味がないつばさくんには、馴染みある、とは言えない場所なのかもしれない。



「そんなに気にすることないよ。わたしだって、沙彩先輩と服買いに来るとき以外は来ないもん」


「そうなのか?」


「うん。この服も、沙彩先輩が選んだんだ…」


「そうなのか…」



 そう言ってつばさくんは、わたしの服を改めて見る。


 ゴスロリとは言ったけど、何もみんなが思い描くようなゴテゴテしさのあるもの(黒○女さんみたいなガチっぽいもの)じゃない。


 今わたしが着ているのは、半袖のホワイトシャツに、膝下丈でフレアスカートになっている黒いワンピースというシンプルなもの。昨日サーヤちゃんと話して、「これならあんまりそれっぽく見えない」と言って、これになった。


 ……そういえば、つばさくんはこの服装、どう思ってるんだろう。



「ねえ、つばさくん。この服、改めてどう思う?」


「??? さっき言った通りだが…?」


「えっと、その。これ派手じゃ、ない…?」


「派手…?」



 そう言ってつばさくんは、少し考えてから、










「そんなことはない。落ち着いた色合いとデザイン。物語から出てきた深窓の令嬢と言われても信じてしまうと思うぞ」






「!!!!!! ホ、ホント!?」


「ああ。改めて、よく似合っている。神宮先輩は目利きが良いんだな」


「あ、ありがとう/////…」



 自分から聞いといてなんだけど、すごく恥ずかしい。でも、とっても嬉しい。わたしもこの服、気に入ってるから…。






「……よかったら、中央駅のこと案内しよっか?」




 ーーだからなのか、自然とそんな言葉が口から出てた。




「それでいいのか…?」


「うん。洋服、褒めてくれたお礼」


「!? …わ、わかった。よろしく頼む」


「んふふ、任せてっ!」



 まずはどこにしよう。あまり時間はないから、つばさくんが自分からは向かわなそうな場所がいいかな。




 どうしよう。笑みが止まらないーー






「んふふ♪」






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「……よかったら、中央駅のこと案内しよっか?」



 予定が決まらずに悩んでいると、まといの方からそんな提案をされた。それはとてもありがたい申し出ではある。あまり中央駅に来ない身として、覚えたいと思う。


 しかし、それを初めてのデートで頼むのは、如何なものか。



「それでいいのか?」



 俺は思わず、反射的に聞いていた。するとまといは、今までにないほどの笑顔で、










「うん。洋服、褒めてくれたお礼」






 ……結斗。お前はよく、鳳の笑顔が好きだと言っていたな。今なら分かる。この笑顔のためなら、なんでも出来そうな気さえする。



「わ、わかった。よろしく頼む」


「んふふ、任せてっ!」


(!?)






 そう言ってまといは、俺の手を引いて歩き出した。いつもは恥ずかしがって手も繋げないのに、今は自然と繋げている。おそらくどう回るか考えながら歩いているせいで、気づいてないのだろう。


 言って気づかせるかと思ったが。








「んふふ♪」






 ーーもうしばらく、この笑顔を見ていたい。








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読んでくださり、ありがとうございました(*_ _)


なお、今回は1時間後に『閑話』が続けて投稿されます。お楽しみに(*^^*)

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