第10話:『つばさくん』と『まといちゃん』


『いい? せっかくデートするし、ここらで距離を縮めるためにも、名前呼びから始めてみよっか♪』


『えぇ!?』






 昨日サーヤちゃんに言われて、確かにと納得はしたけど、未だに恥ずかしい。好きな人を名前呼び…。な、なんかすごいな、これ。恋愛初心者のわたしには刺激が…




「……、鯉沼?」


「うひゃぁっ!!!!!!」




 突然の声に驚いてそっちを見ると、そこにはやっぱり竜ヶ水くんがいた。いや、声で分かってはいたんだけど、分かってたから余計にびっくりしちゃった。だって、



「竜ヶ水くん、まだ10時だよ?」


「……お互いさまだ」


「そ、それもそうだね…」




 元々、わたしたちが決めた集合時間は、朝の11時。そして今は10時。1時間も前に集まっちゃった。楽しみでつい早く出てきたせいで、お母さんにも彼氏が出来たことがバレちゃうし。迂闊すぎて恥ずかしい…。



「……せっかく早く来たんだ。予定よりたくさんのことができると思えばいいだろう」


「そ、そうだねっ! まずはどうしようか?!」



 ついつい言葉が上擦っちゃうけど、気にしちゃダメだよね、うん。



「そうだな…。……“まとい”、その服、似合っている。可愛らしい雰囲気が、まといと合っている」


「あ、ありがと…、って、え!?」



 い、今竜ヶ水くんはなんて…




「……昨晩、『付き合い出したんだから、名前で呼ぶといいんじゃないか』と」


「そ、そうなんだ…」



 ……なんだろう。サーヤちゃんの匂いがする。もちろんこれは物理的な匂いじゃなくて、関わりを感じるって意味だけど。


 確か小鳥遊くんとサーヤちゃんは、お互いの連絡先を交換している。ここで繋がってても不思議じゃない。きっと裏で合わせたんだと思う。……応援してくれるのは、嬉しいような恥ずかしいような。


 でも、竜ヶ水くんもこうして呼んでくれたんだもん。わたしもお返し!



「つ、つばさくんも、かっこいいよっ」


「!?」



 竜ヶ水くん改め、つばさくんはとても驚いたような顔をしたかと思うと、すぐにその顔は嬉しそうな表情になって。




「……なんか、いいな、名前呼び《これ》」


「そ、そうだね…」




 ……わたしは恥ずかしくて死にそうですぅ!!!!!! どうしよう、つばさくんの嬉しそうな笑顔、素敵すぎる!!!!!! しかもそれが、わたしに向いてるなんて…! ああもう、生きてて良かった〜!!!!!!








 〜〜〜




「……まずはどこかに入ろうか」


「そ、そうだね…」




 ーー数分後、周りの人に見られていることに気付いたわたしたちは、急いで移動するのでした。





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読んでくださり、ありがとうございました。


なろうで挙げてた際にはこの話の前に1話入っていたのですが、とくになくても不都合はなかったので、今回は端折りました。

ただでさえ分量少ないのに、もっと少なくなっちゃう(¯―¯٥)…

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