閑話1:天城武人の憂鬱/子安麻那の〇〇 ①
男子バスケ部キャプテン、天城くんのお話です。
多分今作で一番ラノベ系主人公の素質ある()
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「おや奇遇だね?キミも買い出しかい?」
「……子安か」
土曜日の朝。近所のスーパーの開店セールに行くと、子安に遭遇した。俺と子安の家は隣町の関係で、どちらもこのスーパーが最寄りということもあり、こうしたエンカウントはままあることだ。
「まあな。そういうお前は、、、勉強会か」
「ほう。言わずとも分かるとは」
「その買い物カゴを見ればな」
野菜や生肉など、今夜の昼食・夕食になるであろう食材たちが入った俺の買い物カゴと比べ、子安の買い物カゴは、チョコレートやクッキーなどの菓子類がほとんどを占めていた。
子安はあまり甘味を好まない性格で、買ってもビターチョコや無糖のものだ。そんな子安が菓子類を複数、それも手に直接付かないものを選んで買っている。加えてテスト期間ということを加味すれば、誰でも分かるというものだ。
「今日か?」
「うんや、明日だ。クラスの女生徒が10人来るのでね、今のうちにというわけさ」
「いつもより多いんだな」
子安はおおよそなんでもできる。それは勉学についても同様で、学年20位までには必ずいる(だいたい10位以内)。そして教え方も上手く面倒見がいいため、よく勉強会に誘われる(というか主催にされる)。
幸い子安家はかなり広大な敷地を有するため、数名呼んだところでなんら問題ない。
とはいえ、いつもは多くて6人ほどだったはず。
「そりゃそうさ。今年は2年。今はまだ梅雨明けだが、進路を不安に思う者は結構多いのさ」
「みんなしっかり考えてるんだな」
「バスケ馬鹿なキミと違ってね」
「一言多いぞ子安」
「これは失敬」
おどけたように話す子安。ーー気づいてやっているんだろうな。
そうして少しの談義を経て、俺たちは互いに買い物を済ませ、店を出た。
「じゃあな子安、また学校で」
「……待ちたまえ」
あとはこのまま分かれる、というところで、子安が俺を呼び止める。
「大丈夫かい?」
「……なんのことだ」
「今回もいつの間にか振られていたわけだが、心の傷は大丈夫かい?」
「……はぁ。やはり気づいていたのか」
「ふっ。逆に聞くが、気づかなかったことがあったかね?」
眼鏡をかけ直しながら片目を細めて斜めを向く子安。本人曰く渾身の決めポーズなのだが、非常に腹立たしい。バカにされていることもそうだが、そのドヤ顔もポージングも極まっててサマになっているのが一番ムカつく。似合いすぎだ。
「すぐにそういうことするの、いい加減やめないか?」
「君が今まで好きになった女は、たいてい誰かに取られているからな。まあそう気を落とすな」
「余計なお世話だ! ……まったく、昨日賭けに負けなくて本当に良かった…」
「暴露できた方が面白かったんだがね」
「ダシにされてたまるかっ!!!!!!」
子安といると休まらないな、ホント(いつ飛んでくるか分からない爆弾に備えて)。
……でも、まあーー
「……わるいな、子安」
コイツが気を遣ってくれていることも分かるから、なんも言えなくなるんだよなぁ。
「いつでも頼ると良いさ」
そして、そんな穏やかな顔されたら、ますますいたたまれなくなるのがホント、自分が情けなくなってくるーー。
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ーーキミが今まで好きになった女は、大抵誰かに取られるからな。まあそう気を落とすなーー
ーー余計なお世話だ!!!!!!ーー
「ふふっ」
先ほどの武人との会話を思い出しながら、麻那は微笑する。彼が振られるたびに、こうしておちょくっているのだが、何度やっても飽きることは無い。
「やれやれ。相変わらず女々しい男だ。もうこれで何度目だ? そろそろ慣れても良かろうに」
ふぅ、と息を吐きながら、麻那は独りごちる。
麻那と武人。
ふたりは小学校からの知り合いで、からこれ10年以上続いている。そのことを本人たちに言えば、
「「ただの腐れ縁[だ/さね]」」
と言って、何でも無いように嘯く。しかし。
「ーーやつに浮かない顔は似合わないからな」
そう言って微笑む彼女の表情は、バスケ部員が見れば「「「「「「あの子安[/さん/先輩]が!?」」」」」」と驚くほどに穏やかなもので、そして同時に、少しの憂いを含んでいるのだったーー
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