第12話:デート時の昼食
「ーーあっ、もうこんな時間。そろそろお昼ご飯にしよっか」
「そうだな、混む前に急ごう」
まといに中央駅を案内してもらい(とはいえ全部を案内するのは時間が足りないため、1,2階だけだ)、11時になったので、昼食を取ることにした。
昼食と言えば12時のイメージが強いが、休日の昼時はどこも混んでいる。そのため、すぐに入れるように、少し早めに取ることになった(そのことを見越して、元々の集合時間も11時にしてあった)。
そんなわけで、昼食を取りに来たのだが、
「まとい、ここでいいのか?」
「うん、実はあんまり入ったことなくて…」
「なるほど」
そう言ってやって来たのは、全国チェーン展開している、某有名なハンバーガーショップだ。ーーあまりデートっぽくはないような気もするが。
「男の俺が言うのも変な話だが、デートの昼食とは、カフェとかに入って、雰囲気を味わうものだと思っていたのだが」
「わたしもその考えはあるんだけど、高校生からそういうお店使うの、なんか抵抗があって」
「ふむ…」
それは盲点だった、ということはない。むしろその考えは共感できる。なんとなく、コーヒー1杯にこの歳でそんなにかけていいのか、と自己討論をしてしまう。
とはいえ、デートでもそのスタンスをとるのは、まといに失礼な気がしていた。
「ごめんね、それっぽくなくて」
「いや、大丈夫だ。俺もその考えは共感できる。むしろ気を遣わせてしまってすまない」
「ううん、こっちこそ。……今まで誰かと付き合ったこととかないから、どうするのが正解かわからないね」
そう言ってあははは、と笑うまとい。その笑い方を、俺はどこかで見たような・・・、そうか、思い出した。
「結斗か」
「え、小鳥遊くん?」
「ああ、結斗も鳳と付き合い出した頃は、今のまといみたいに、困ったように笑ってたなと思ってな」
今でこそ結斗と鳳は、家でほとんどを過ごすような熱々の恋人同士だが、付き合い始めた中学卒業当時は、「何かした方が…」「どこかに誘うべき…?」とワタワタする結斗の姿を何度も見た。だが結局、
『……ゆいちゃんの可愛い姿を、他の人に見せたくない』
と、珍しく拗ねた鳳が言ってから、以降ほとんどがいわゆる“お家デート”なるものになった。
「ーーということがあった」
「/////」
話を聞いているうちに恥ずかしくなったのか、顔を赤くするまとい。よく女バスの方から、「まとい可愛い〜♪」と聞こえてきていたが、俺もそう思う。まあ、つまりどういうことかというと。
「あまり他人と比べなくても、楽しければそれでいいと、俺は思う」
「つばさくん…。そうだね、楽しければそれでいいよねっ!」
「あ、ああ、それでいいと思うぞ」
「??? どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
……その笑顔が見られただけで、今日ここへ来たのは正解だったと思える。
「ほら、まずは注文しないとな」
「うんっ。ってああっ、ちょっと混んできてる!?急がないと!」
そう言って、わたわたしだした まとい。
ーー小野先生、チケットを譲ってくださり、本当にありがとうございました。
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