第6話:賭け事はお好き? 〜伴わないリスクとリターン〜

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 〜少し前〜




「せっかくのゲームだ。ここはひとつ、白熱させるためのスパイスを与えようじゃないか」



 私の言葉に、男バス部員のほとんどが不思議そうにこちらを見る。そうじゃないのは天城に竜ヶ水に小鳥遊。うん、綺麗に同中おなちゅうのメンツだ。天城と竜ヶ水は胡散臭そうに、小鳥遊は愛想笑いをしながらこちらを見ている。うんうん、分かってるじゃないか。私が普通のことを言うはずがないと。さすがだ。




「スパイスって、何やらせる気ですか?」


「そうだぞ子安。確かに今日の練習最後はゲームで締めるが、変なことをして怪我をしては困るんだ」


「·····」



 私のことをよく知る3人から、胡乱げに問われる(竜ヶ水はこういうとき喋らない)。ふっふっふ、その言葉を待っていたぞ!






「よくぞ聞いてくれたっ! 今日のゲームで勝った学年チームにはーーもれなく、“私の姿を見る権利”をあげようじゃないか!!!!!!」






「「「「「「うおぉ〜!!!!!!」」」」」」


「おいこら子安!?」



 おぉおぉ、予想以上の需要、さすがにこれは想定外だ。確かに私は、男ウケが良い体つきをしている。中学時代は女バスで走ってたこともあり、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。加えて普段から『眼鏡ショートヘアジャージニーソ』と、時折クラスのオタクたちに「要素が多い!!!!!!」と突っ込まれるような女だ。多少は喜ぶ連中もいるだろう、とは思った。


 しかしだ、ここまで歓喜されるとは思わなかった。普段はスポブラつけて揺れは抑えてるし、顔もそこまで可愛い系ではない。まさか全員が雄叫びをあげるとは…。



「小鳥遊。私はいつからこんなに人気だったのだ」


「……うすうす気づいてましたけど、ホントに気づいてなかったんですね」


「こういうことに意外と疎いよな、子安」


「·····」


 そして君たちはなぜ呆れているんだ…








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「ーーということがあったのさ」


「そりゃそうなるわ」



 子安先輩の話を聞いて、紗彩先輩がジト目で子安先輩に呆れた表情を見せる。それを見て子安先輩は不思議そうにする。普段ジト目なんてしない紗彩先輩だけど、その気持ちはとってもとってもよく分かる。


 先輩は隠せてるつもりかもしれないけど、その胸の大きさはまったく隠れてない。むしろ服を押し上げて強調されちゃってる。そんな人が“色んなコスプレ姿”を見せると言っている。少し私も気になる。


 そもそもの前提として、子安先輩は美人だ。本人は「女の子っぽさはあまりないね」と言っているけど、それはどちらかといえば顔立ちが整っているからで、とても綺麗だ。加えて身長も160後半はあるし、あえて言うなら大人の女性、って印象かな。


 仕事の手際もよくて、たびたびどこかのヘルプに入っているところを見かける。


 総じて子安先輩を言葉で表すと、『一番人気ではないけど、好意的に思っている人が多い人』ってなるのかな。私自身、面と向かっては言わないけど、先輩のことは普通に尊敬しているし。






「まったく、けしからん女め。まずはワタシに見せなさいそしてそのたわわに実った果実を揉ませなさい」


「何言ってるんですか紗彩先輩!?」


「え、そんなの好きなときにしなよ」


「子安先輩まで!」


「え、ウソホント〜?じゃあさっそくm」


「もうやだこの人たち〜!!!!!!」



 普段は優しくて大人びた人たちなのに、なんでこう·····




「コホン。とまあ冗談はここまでにして。さすがにこの条件だと、私の身体に興味ない連中にはなんの旨味もないのでね。そこは考えたんだ。そしたら今度は天城と竜ヶ水がやる気になってしまってね、気づいたらこうなってたのだよ」



 どうやら珍しく照れている子安先輩は、一度咳払いをしてからそう言った。


 確かにこの点数は、あの2人がそれぞれ頑張らないと難しい内容だとは思うけど…。



「よくあの2人をやる気にさせたね、マナ」


「ふふん、まあね。伊達に中学バスケ部からの付き合いじゃないさ」



 そう言って子安先輩は、いつもなら不敵に笑うところなのに、今日は私に優しく微笑みかけてきたーー






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「あ〜、疲れた〜」


「先輩たち、いつになく集中してましたね」


「たりめーだろ小鳥遊!」


「彼女がいるお前や竜ヶ水と違って、俺らに美女の水着姿を見るそんな機会はねえんだよ!!!!!!」


「大声で言わないでくださいよ…」



 前半5分に出た部員が入れ替わり、僕は今、同じく前半に出た先輩たちと話している(試合中のタイマーや審判は交代制で、今日は僕の当番じゃない)。ものに釣られてやる気を出すのはゲンキンだなぁとは思うけど、こういう日くらいはいいかな。



「にしても、竜ヶ水と天城もやる気を出してくるとはな〜。こういうの、興味ないと思ってた」


 今度は違う先輩が来て、会話に混ざってきた。試合見ようよ…



「だよな〜、てかそれ言ったら小鳥遊! お前もかなりガチだったじゃねぇかッ!! なんだよ、彼女だけじゃ足りないってk」


「先輩それ以上は怒りますよ?」


「「すみませんでした」」


はぁ〜、まったく。僕は美香さん一筋なんですから。まあでも、一応教えてあげてもいいかな?



「僕たちには、それとは別で賭け事が用意されてますからね。つばさには渡りに船でしたし、天城先輩は負けられない戦いになりました」


「へぇ、ってあれ、お前は?」


「僕は特になかったですね。でもつばさがやる気になってるので、その援護はしようと」


「竜ヶ水と天城が食いつくとか、どんな賭けなんだよ…」








「負けたら黒歴史垂れ流し、勝ったら映画館のペアチケット。です」


「「それ圧倒的に天城不利なんじゃ」」


「まあ、それが子安クオリティですから」






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「ーー喜びたまえまとい君。竜ヶ水が勝ったら映画館に誘ってくれるぞ」


「〜!!!!!!///」


「うわ、まとい顔あかーい。可愛い〜」


「!? もうっ、もう、もう!!!!!!」


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