6-2
「つまんない~~!!」
「ふてくされないでくださいよ二代目様ぁ」
とうとう私の本音が口から漏れた。
ディフには悪いが私はエルトのお腹の中での暮らしに飽きてきてしまっていた。
「最近はエルトも全然お外に出してくれないし」
「退屈。倦怠。所在無し。しかし、宿主(あるじ)とてお忙しいのですよ。我慢してくださいませ二代目様」
ディフはそう言って今日も私に新しい話をしてくれたのだが、女の空想話はもう勧善懲悪もよろしくなパターンが決まっている。
それに部屋にある本だってほとんど全部読んでしまった。
魔法に関する知識の本も、漫画も、ファッション誌も。
新しくしてくれなくちゃ地元の美容院以下じゃない。
そもそもエルトが忙しいとはどんな状態なんだろう。
外側の事が解らない以上彼がどう過ごしているかも私はあやふやだった。
(降ってくる悪いものを食い消す、とは言ってたけど。私に会いに来れない程忙しいのかな……)
それって大丈夫なのかな。と、思いの外エルトのことを気にかけている自分が不思議だ。
「ささ、今は私めと遊びましょうぞ」
小さな子供をあやすような言い方のディフに私もここは童心に返ってやる。
「もっとお花の精霊とかドラゴンとかペガサスとか、ここにはいないの?」
「羽根が付いた生物がよろしいのですか? でしたらペンプティどもがいるではありませんか。背中に乗って飛ぶことも出来ますぞ?」
「あんなトンボのおっきいキモいのじゃなくって……はぁ。全然イメージと違うのよ。エルトの中って虫みたいなのばっかりじゃない」
「そういわれましても宿主は深淵の虫達の真祖でございますからなぁ」
「ぴゃあん、ぴぴょ……?」
私とディフの会話にメナちゃんはコロッと首を傾げる。
深淵(ここ)の世界が全てだったメナちゃんに言ってもわかるわけないか。と、思ったけれど、そうでもないみたい。
私が出会ったときよりもはるかに表情豊かになったこの子は、
「ぴゃんぴ! ぴ、びょーっ!」
私の言葉を理解し跳ねて反応してくれる。
小さな飛べない羽根なのか手なのかを揺らして広げ、しかめっ面で火を噴くドラゴンの真似をした。
「もしお外で実際に会えたら友達になれたりするかな?」
「ぴゃあ!」
「また一緒にお外に出て美味しいもの食べようね」
「ぴゃいっ」
にっこりと笑って肯定するメナちゃん。
きっとなれるよ。と、言ってくれているのだろう。
一生懸命私に構ってくれているディフには悪いけれど、メナちゃんだけがこの窮屈な暮らしの癒しな気さえしている。
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