第4話 地上(そと)の世界
――――この異世界には結構そのままの果物が存在する。
「この丸くて赤いのはね、り、ん、ご」
「んぴ……ぴゃんぽ!」
「あっちの大きくてあみあみになってるのは、メロン」
「ぴょぴょん……」
「これだったらメナちゃんにも食べれるかなぁ。ちっちゃくてかわいいね」
「ぴぴぽ! ぴぴぽ!」
「そう。いちごね~」
背伸びをしたら砂浜と海が見える港町。石畳。連なる軒先。たくさんあるうちの隅っこ。とある屋台の一件で私はメナちゃんに果物の名前を教えていた。
話せば長くなるんだけどまぁ色々とあって街に繰り出すことには成功したので、こうしてほのぼのとした時間を過ごしている次第です。
「おじさん。このりんごを二つとあといちごも一舟くださいな」
「まいど。全部で600円だよ」
不思議なことにこの異世界の通過は日本円。どうみてもヨーロッパ風の街並みしてるのに。
エルトダウンに預かった財布から小銭を出して店主に手渡せば「たしかに」と返事が来て手際よく品物を入れてくれた。紙の手提げを受けとる。
「よいしょっと」
右腕にはさっきブティックで買った着替えが二着に、雑貨屋さんの小さな便利ナイフとアクセサリー。そこに果物の袋を提げて、布でくるんだメナちゃんを抱き直す。
「荷物、持とうか?」
「大丈夫です。全部自分の物だから自分で持ちます」
背後で私と果物屋のおじさんのやり取りを後ろで見ていたエルトダウンが気を遣ってくれたけれど、笑って断った。既に彼は私の財布をしてくれているのに、その上荷物もちまでさせるには気が退けてしまう。
「あ、じゃあメナちゃんをちょっと……」
荷物を整理するため買い物した商品ではなくメナちゃんをエルトダウンに抱っこさせようとすると、メナちゃんの方が「ぴゃっ」と鳴いて彼の腕から飛び降りてしまった。私を見上げて大きな目をうるうるさせる。
「ふむ。やっぱり私よりも君が良いって」
「……みたいですね」
りんごを一つといちご一粒を持ち他は一袋に纏めてから、すぐに抱っこしなかったから地面に転がってむくれていたメナちゃんを拾い上げる。
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