4-2


「んぴ。ぴぴぽ!」


「はい、いちご。よしよし。よくかんで食べてね。エルトダウンさんもどうぞ」


「ありがとう。頂くよ」


待ちかねていたメナちゃんの口元にいちごを、エルトダウンにもりんごを差し出す。二人とも嬉しそうに受け取ってくれた。


「おいしい?」


「んぴ!」


私が尋ねればメナちゃんはにっこり笑う。屈託の無い笑顔。ほわほわしちゃう。


「私には味覚が無いから味は解らないけれど君がくれたものは何でも嬉しい」


「はーっ。そうじゃなくて……」


一方エルトダウンは歯の浮くような台詞を真顔で淡々と吐く。

でもどっか抜けてるというか、やっぱりこの人天然入ってる。あんな暗い地下深くに一匹で住んでるから常識知らずで思考が幼いのかな。擬態した姿も漫画の模倣だっていうし。

ちゃむちゃむと小気味の良い音を立てながら小さな口でいちごを幸せそう食むメナちゃんを二人で見つめる。

見つめていると何だか。


「……家族みたい」


「家族?」


目を丸くして復唱するエルトダウンに頷く。すると彼は私が予想しなかった反応を返してきた。

咀嚼するように「家族……家族……」と一人で小さく繰り返したと思えば急に閃いたように手を叩き、


「そう? ユーレカが妻で私が夫。これが子というわけだね? 素敵だ。そうとなれば私のこともエルちゃんと呼んでくれるかい?」


「エルトでいいでしょ」


どこまでも抜けた発想で、私には当前のような話も興味深く興奮したというようにテンションをあげて確認してくる。

それだけならよかったのだが。


「夫婦なら愛し合ってたくさん子作りをするものだ。……そうだ、今からここで交配をしようユーレカ!」


「はあ?! コウハイ?!」


エルトは本気だ。真っ直ぐな目で私を見つめ、そのまま私に迫って手首を握った。

押し倒さんばかりの勢いで体を寄せ、自身のベルトの金具を外してズボンを引き下ろし膨らんだ下着を脱いでアレを解放しようとしている。


「そうだよ。何故嫌がるんだい?」


「ま、待って待って待って! ちょっと! イヤ! やめて! ちがう! バカ!」


メナちゃんはいちごに夢中で私らのとんちきな遣り取りに気付いていない。気付いたところでこの子がどうこう出来る気もしないが、前にも間に割ってはいってくれたことならある。しかし、いまそれは期待できない。

何がスイッチになるか解らない相手に余計なことを言ってしまった後悔から顔を背けたい。

物理的にはもう背けてるんですけど。詰めよった彼の息が髪にかかる。


(待ってどうしてこうなるの?!)


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