2-3
捕らわれた私はそのまま化物の口の中へと連れ込まれてしまう。
視界が狭い。赤い肉の塊に押し潰されて、白い光が見えなくなってくる。ぬるくて熱い。息が苦しい。
生きたまま食べられるってこういうことか。
人生終わった後には何が起きるかわからないけれど、生きてるうちは食べ物の気持ちになるなんて、なかったな。
そんな風に簡単に受け入れられることではない。けれども、踠くにも踠くだけの動作が出来ない。
腕も足も全部を取り込まれてしまったし、頭のすぐ上には首を引っ込めないと人間の等身ほどあるの牙に当たって噛み砕かれてしまう。
「や……やめっ、んぐっ……!」
ばくり。と、一気に口が閉じられた。
完全に終わった。と、思った。視界が赤い肉の色一面になり、それ以外の何も見えない。
白くて硬いものは化物の牙。ちぐはぐで噛み合わせのもとない尖った牙が波打つようにもぞもぞと揺れ動く。
揺れに合わせて私の体も奥へと更に引き込まれていく。
乱暴に放り込むようなことはせず、私を包んだ舌はそのままゆっくりと喉へと向かっていく。口から取り込まれて喉へ行くのなら、人体で言えば食道を通って胃袋だろうか。外側の様子が見られないので、どこをどのように通過しているかわからないし、化物の消化器が人間様と同じとは限らないけれど。
目覚めたてすぐに化物に食われた私の、異世界暮らし。始まりは確かに最低最悪だった。
ただ、どうしたことかその時から不思議と不安は小さかった。
食べられてしまったことに絶望して諦めてしまっていただけかもしれないけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます