概要
殺人の小説を書くのなら、人は殺した方がいい。
三年新作の出ていない推理作家の須藤鏡花は大学時代の同期で現在探偵をしているという桐生北斗の元を訪ねる。推理小説の取材として探偵の仕事を手伝わせてもらうためだ。強引な鏡花の頼みをしぶしぶ了解した桐生が現在携わっているのは、三年前に失踪し、最近遺体が発見された推理作家早坂雄一郎の事件。そしてその事件は殺人を経験するために三年前鏡花が起こしたものだった。鏡花は北斗の推理を誘導して事件を解決させまいとするが、一方北斗は初めから鏡花が犯人ではないかと疑っていて……?
倫理のない推理作家兼犯人と勘だけで推理をする探偵の女二人のお話です。noteの創作大賞2023ミステリー部門で入選(別冊文藝春秋編集部推薦)しました。
倫理のない推理作家兼犯人と勘だけで推理をする探偵の女二人のお話です。noteの創作大賞2023ミステリー部門で入選(別冊文藝春秋編集部推薦)しました。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!なぜ彼らは小説を書くのか?
個人的に「こんなミステリを読みたかった!2022」(個人主催・選考)の大賞に選出したいくらいに満足感のある作品です。
ミステリとしても叙述と会話の掛け合いが巧みに使われていて、スリルと読み応えがあるのですが、何よりも創作をするすべての人への、叩きつけるようなメッセージが胸に迫ります。
主人公は若くして大成した天才女性小説家。書けば大ヒット、映像化もひっきりなしで人気も申し分がない。おそらく小説家としての頂点を極めたところで、しかし彼女の筆は数年前からぱたりと止まってしまう。
主人公は「小説を書く」という行為自体に倦んでいます。そして彼女が語る「物語を生み出すことの意義」が、諦念と怒りに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界の中心でこの小説を叫びたい
私はミステリーが決して得意ではありません。面白いミステリーを知らないだけかもしれませんが。ミステリーということは人が死んで、人が死ぬということは、絶対に完全なハッピーエンドにはならないからかもしれません。
鏡花は感情移入できる主人公ではありません。でも、とても愛おしい主人公です。彼女に幸せになって欲しい、ときっと誰もが思うでしょう。そういう、魅力がある主人公です。私はこれがミステリーである事に、読み進めるうちに絶望しました。あぁ、これは、ミステリーだから、完全なハッピーエンドはあり得ない。恐れと目が離せない心持ちで、次話へ、次話へ、とボタンを押しました。そして、その結末に胸が震えました。そう…続きを読む