世にも優しいチベットスナギツネ

いやチベットスナギツネの生態は知らないのだけれど、なんとなく冷めた印象のある動物。

夫から突然に「熱帯魚を飼いたい」と言われ、件の獣の様相となった作者様であるところの『私』。
一般的に運命共同体の夫婦間に、一方の全く未知の概念を持ち込むのはハードルが高いように思う。
たとえば切り身でしか魚に触れられないような妻ならば無理だろうし、飼いたいものがチベットスナギツネだったらやはり無理だろう。
しかしきちんと譲るべきところを互いに折り合い、かくして水槽が導入される。

――が。
◯◯したい、とはそれで全て完結するという保証ではない。予定は未定で決定でない、という教訓も世にはある。
誰にだって覚えがあるはず。たとえば可愛い皿を見つけて、それに合うお菓子を作りたいとか。奮発して高級な和皿を買ったら、それ以上の料理を載せたいとか。

とはともかく。夫婦間のちょっとした丁々発止がコミカルに描かれ、楽しくさあっと読ませていただいた。
アクアリウムがどうこうもありつつ、夫と『私』の独特の距離感が面白い。
ぜひぜひ、続編を期待したいお話。

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