第8話 A Lonely Boy meets Old Man

「あっ、いた。タケル君だよね」


ボクが公園のベンチで目を覚ますと、1人の男が声をかけてきた。チラッと一目だけ見て、その場を離れようとした。


「キミのよく知っている人から頼まれたんだよ」


ボクの知っている人は1人しかいない。いないけどそんなことをする人じゃないはずだ、先生は。じゃあ誰?


「タケルは用心深いから…とは聞いていたけど、やっぱりかあ」


男は頭に手をのせ、上を向く。ワシワシと髪をかいたあと、胸ポケットからあるものを取り出す。手帖とペン。使い古されたソレはボクのよく知るモノで……。


「なんでお前が持ってるんだ!先生に何をしたっ!」


ボクは男に猛烈なタックルをしようとしたがあっさりかわされた上に襟首つかまれそのまま遠くに投げ飛ばされた。


「軽いなあ。もう少し肉がつかないとな。それとなんだよ、女みたいな声してさ」


ガッハハと大笑いしボクに紙を1枚握らせた。見覚えのある字で書かれたそのメモと男の顔を何度も何度もボクは見てしまう。


「色々と教えてもらえと、書いてあるだろ。引き受けたからにはしっかりしこんでやるさ」


来いよ、と一言だけつけ足してさっさと足早に去って行く。


ボクは慌てて後を追うしかなかった。


相手が何者か分からないまま、だったが、『先生』からの紹介であれば信じるしかない。


存在しないハズのボクが唯一、世界と接続される接点となる『先生』。


何故、こんなことをするのか分からなくて怖いけど間違ったことをするはずはないってボクは知っている。だから、決めた…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る