第11話 食を知るということ

「今までを食ってた?どういうのを知ってる?」


テツが急に真面目な顔で聞いてきた。


ボクの判断基準は他の人が食べているかどうか。または一度口にして大丈夫だったかどうか。


オニギリやパンというものはばあちゃんや先生から教えてもらった。

弁当という、色々なものが入ったヤツは知ってる。さっき食べたし。


あとは。

……知らない。

分からない。


「お菓子は……。ホントに知らないみたいだな」


袋を指さすから袋をのぞいたが色々入ってる、くらいしか分からない。


「食べたことないんか?」

「うん」


袋をテツに渡す。

中から、クッキー、ガム、飴……と言いながら出していたが

「追々、教えていくか」

と全部袋に戻した。


「チョコレート、ちょうだい」


ボクはテツに言ってみる。


「もう少ししたらご飯だからな。少しだけな」


そう言いながらさっきとは違うものをくれた。


「コレもチョコレート?」


テツは笑いながら


「色んな種類があるぜ、チョコレートはな。チョコレートに限らずお菓子はどれも色々たくさんの種類があるんだよ」


さて、飯の用意でもすっかと言いながら台所へと消えた。


テツの様子をテーブルに頬杖つきながらみていた。

人がご飯を作ってくれて、それを食べるというのはばあちゃん以外初めて。


座って、箸を持って食べるなんて久しぶり。まして、テレビを見ながらゆっくり食べるなんて、考えたことがなかった。


いつも、手で掴んで口に押し込むようにしか食べていなかった。常に周りに気をつけいつでも走れるようにしていた。

…寝るときでさえ。


「できたぞ」


大きな茶碗の中には見たことがないものが……。


「何?ヒモ…」


「うどんだよ。キツネうどん。色々言うより先ずは喰ってみろ。こうするんだ」


テツはズズッと吸い込んでいく。

ボクは同じようにはやらなかった。

できなかったのだ。


むせて、一度、中身を睨む。

深呼吸してから恐る恐る口に運んだ。


「っ!」


「熱いから気をつけろよ。ゆっくりでいいから。無理だったら喰わなくていいからな」


ヒモのようにみえるものを必死に箸で追いかけるボクにテツは苦笑い。


「フォークがいいか?」


どうしても上手くすくえず悪戦苦闘しているボクにテツは声をかけるがボクはどうしても箸で食べたかった。


「いらない」


手で、って思ったが熱いのでやめた。


悪戦苦闘しながらも口に入れていく。


美味しいって言うのか……。

不思議な感じ、だった。


「お前、なんでもが初めてなんだな。コレからはオレがゆっくり教えてやるよ」


テツはボクを引き寄せ、ギュッと抱きしめる。ばあちゃん以外で初めてされた……。テツのニオイ、暖かさがボクを包む。


ボクの目からも、静かに……。

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