第12話 綻びはじめた箱庭
ボクは存在していない。
世界につながっていないんだよ。
先生に言われていた。意味は分からなくても周りの反応でなんとなく分かる。
寒くてお腹がすいて、もう動けないって横になっているとき。
誰も彼もが、皆、まるでゴミが落ちているように素通りして行く。
ゴミそのもののように、足で蹴り動かす人さえいた。
多分、ボクがそのまま冷たくなったってもゴミのようにボクを片付けるだけ、なんだろうな。
テツと暮らしはじめて、ボクは改めて何も知らないんだと思い知らされた。
テツと並んでご飯を作るとき。
お米を洗い、水を入れてスイッチを入れ少し待つとご飯に変わっている。
……ナンデ?
ボクがやってみても、
テツがやっても
やっぱり同じ。
……ドウシテナンダヨ
機械に何か仕掛けがあるかとあちこち転がして探してみたがみつからなかった。
「ご飯炊きはお前な。オカズはしばらくオレがやる」
ご飯の前にお風呂。ご飯の後は勉強。
ひらがなは読んだり書いたりができる。数は数えることはできる。
でも計算というのはよく分からない。
「1枚ずつでいいから」
ドリルというのをテツは買ってきた。
最初はひらがなの書き方。声に出して読みなから書く。
「あかとんぼのあ。あかとんぼって何?え?トンボ?知らん、何?」
など、一回一回手を止めて聞くボクにテツはたえきれず、腹を抱えて笑う。
少しずつ、少しずつ。
乾ききった土に水がしみ込むようにボクの身体に知識がしみ込んでいく。
それにつれて、ボクの中に小さな違和感のような得体の知れないモヤモヤが大きくなっていく。
何故、ボクは世界とつながらずひとりでいたのか?
ボクガミンナニミエテイナイ?
ボクガミンナヲミテイナイノ?
ドッチ?
先生にはボクが見えている。
テツも。
みんなにテツはみえている。
テツと一緒になってみんなはボクがみえるようになった。
テツ、と……?
何処か、何か違うのか?
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