第7話 少し遅れたクリスマス
ボクはこの世界に存在していない。
だから何をしても……例えば悪いことをしたとしても警察はボクに何もできないんだよ。
先生はボクにいつもそう言っていた。
だから、タケは好きなようにやっていいんだ、と。何をやっても大丈夫だよって。
先生が一生懸命にお願いして、ボクに仕事するところを作ってくれる。
でも。
何故か少ししたら追い出される。
…みんなそうなんだよな。
助けてやる、なんとかしてやるとか言ってて結局は何もしてくれない。先生とばあちゃんだけだ。
あのとき……。
ばあちゃんの家にたくさんの大人たちがきた日。ばあちゃんはボクを抱きしめ連れて行かないで欲しいって言ってくれた。でも、大人たちは無理やりボクだけを連れて行ったんだ。
たくさんの人がごった返す、あの場所で先生とであった。あの変な場所で先生はボクを守ってくれた。
今はいないけどボクが困ったときはすぐに駆けつけてくれる。
今、どうしてるんだろう……。
ボンヤリ考えてるときじゃなかった。
寝る場所をなんとかしなくては…。
いつもなら誰もいない駅の待合室か閉まらないお店の地下駐車場で寝るんだけど。それかそういうお店の休憩所で。
考えながら歩いていたら建設中のビルに行きついた。
……ココに決めた。
上の方の階で鍵のかかっていない部屋が1つだけあった。ソロリとドアを開け中に入る。奥の窓側の部屋に何故か毛布が1枚あった。ボクは少しだけ考えてそれに包まり寝た。冷たい板の上じゃなく、草のニオイのする柔らかい床の上で眠った。
久しぶりに柔らかな感触に包まれあっと言う間に深い眠りに落ちた。
朝方、カチャっという音で目覚めた。
誰かがきたのかといつでも逃げられる状態で待つ。だが、いつまで経っても足音が聞こえることはなかった。
気づけば、ボクは再び眠りに落ちていた。
数時間後、ボクは目覚め、大きく伸びをする。手に何かが触れた。
少し大きな包みと小さな包み、そして手紙。手紙はボクが読めるようにほとんどがヒラガナで書かれていた。
【わたしのだいすきなたけるくんへ
メリー・クリスマス!少しおくれたけれどプレゼントです。さむくなってきたのでうわぎもいれてるからね。
しらない人のきたないふくなんかきちゃだめ。それとだいじなものはちゃんともってること。やくそくだよ】
大きな包みは冬用の衣類が小さな包みはあのときのナイフが入っていた。血がついて黒くなっているところもあったがまだ使えそうだ。
連絡もしてないのにどうしてボクのいる所が分かったんだろう?
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