第9話 闇に潜むモノたち

男との奇妙な生活が始まった。


男の住処(スミカ)は古く、今にも崩れ落ちそうな小さなアパートだった。


そのアパートの2階、一番奥の部屋。6畳2部屋とトイレ、小さな風呂場と炊事場があった。


ちゃぶ台とテレビ、敷きっぱなしの布団。

それ以外何もなかった。


「ソッチの部屋使いな」


何にもないガランとした部屋がボクの部屋となった。

窓の下に店の裏がみえた。


ボクの荷物は何もない。

もちろん携帯とかスマホとかいうモノは持っていない。ボクから連絡しない限りボクへの連絡は無理のハズ。なんだけど?


でも先生は……。


「ボウズ、好き嫌いはあるか?」

「ボクはお坊さんではありませんよ」


男は一瞬、目をまん丸にして、ガハハハと大笑いをした。ホント、よく笑うな。


「じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」

「タケル」


会話が続かねえ、と肩をすくめ男は笑う。


「オレはなあ、そうだな…テツって呼んでくれや」


歯ブラシとバスタオル数枚、茶碗とコップなどを揃えてくれた。全部オレンジ色。


「テツはミカンが好き?」


「は?なんでだよ。好き嫌いはないが、とりたてて……。あっ、色のことか。意味はねえよ。ただいいなって思っただけだよ」


テツの部屋にテーブルがあるから壁にもたれかかりテツの動きをボンヤリ見ていた。時折、テツもコチラをみるからなんとなく目があってしまう。その度お互い気まずく目を逸らす。


メシ、喰おうぜ、とテツはテーブルに弁当を広げた。


テレビはニュースが流れていた。

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