「自宅介護」と聞いて、どんなイメージが湧くでしょうか。
明るく良いイメージを持つ人は、少ないと思います。だって、世間には介護にまつわる暗いニュースがいっぱい。悪い結末だけを突きつけられて、その実態を知る機会はなかなかありませんから不安が募るばかり。
そんな自宅介護のあれこれをカラリと明るく読ませてくれる、有意義なエッセイです。
介護のお話ですから、もちろん綺麗事じゃすみません。お世話もどんどん大変になるし、元気だった家族が弱っていくのを目の当たりにする悲しさも。
でも、本来なら重くなりがちなエピソードも、ユーモアを交えて語ってくれる。その語り口に家族としての愛情が感じられ、安心して読めるのです。
介護認定や老人ホームへの入居についても書かれていて、非常に参考になります。
もちろん家庭によって事情は異なるでしょうけれど、少なくとも介護に対する「正体不明の不安」は薄れました。
他人事ではない、介護問題。この作品のおかげで、前向きにその時を迎えられそうに思います。
高齢になり、脳の機能も体の機能も衰えてくる家族の現実を前にした時、私たちは何を考え、どう向き合うのか。ライトでコミカルな語り口の中に、重く鋭い問いかけが濃縮された作品です。
年老いた家族への愛情と、次第に分別のつかなくなるその人の生活を支えなければならない辛さ、やりきれなさ。家族内では支えきれなくなった高齢者を施設に預けてしまうことの葛藤。話数が進むに連れて様々な感情が絡み合い、言葉にし難い苦い痛みが読み手の胸にも迫ります。
高齢者介護にまつわる問題は、一層の長寿化が進むからこその社会問題であり、深い悲しみや虚しさの伴う厳しい問題なのだと改めて痛感します。長く生きること、老いることの難しさを改めて考えさせられる作品です。
介護職員として働いている者の視点からレビューを書かせて頂きます。
「介護の仕事って大変だね」
よく言われます。
しかし、仕事としての介護と身内を介護する大変さは、異なります。(長くなるので割愛します)
作者様は、お婆様を介護なさっていたかたです。
ご自身の体調と向き合い、同居家族と向き合い、行政と向き合い、要介護者のお婆様とも向き合わなくてはならない。
介護職であれば割り切れることも、身内相手では割り切れないことも多いです。(ここが、仕事としての介護と身内の介護の大きな違いだと思っております)
作者様も、割り切れずつらい思いをしたかと思います。
それでも、お婆様をよく観察し、コミカルに捉えられる作者様は、介護者の鑑です。
このエッセイを通じて、身内を介護する現実を多くのかたに知って頂きたいです。
最後に、作者様に一言。
あとは介護職員が引き受けます。お任せ下さい。