誰もが直面する問題は想像以上に壮絶だった

育児と介護。誰かの面倒を見るという意味では同じで大変ですが、前者は子どもで成長という楽しみがありますが、後者は終わりが見えずそしてきっと状況が改善することが見込めない、精神的にもキツいものでしょう。
相手は認知症を患って、頑固で理不尽な要求を突きつけ罵詈雑言を浴びせるおばあちゃん。
実の家族だから、当然報酬や対価なんて何もない。

分かっちゃいるけど実際に経験すると辛いでしょうし、だからといって真剣に向き合う覚悟も踏ん切りもつかない。

そんな暗いはずのイベントを、明るいタッチで、しかも心の声がストレートにぶっちゃけられていて、軽妙に書かれています。

いや、実際は壮絶なはず。書いてある内容もさりげなく強烈な話ばかりだし、直面する勇気だってないけども、重すぎない筆致によってコンパクトにさくさくと最後まで読んでしまう。

そして最後は特養に預けられるおばあちゃんとの別れを惜しむ描写もあり、一緒にいるとイライラするけどいないと寂しい。そんな不思議な感情は、実際に経験された方にしか分からないのでしょうが、読んでいてウルッと来てしまいました。

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