『僕が自宅介護をした理由』

夷也荊

第1話 婆さんと猫

ある日、野良猫が家に侵入。


黒くて、毛がふっさ、ふさで、大きくて、目が黄色の猫。


元々飼い猫だったのか、何と爪で引っ掛けて戸を開けるのだ。


いや、猫は嫌いではない。むしろ、僕は猫派だ。


しかし、想像して頂きたい。


自分の家の階段を降りると、下からものすごいスピードで駆け上がってくる黒猫!


もはや恐怖を通り過ぎて、パニックである。


結局、箒を持ち出して家からご退場頂いた。


それで、だ。


実は家で飼っている猫もいる。


その飼っている猫は、家族のくしゃみで飛び上がるほどの超ビビり。


もちろん、自分の家を守るべく立ち上がってはくれない。


部屋の奥のテーブルの下で、ブルブル震えていたわけです。


飼い猫にはちゃんと名前があります。


しかし、だ。


婆さんはその名前を一向に憶えてくれない。


いつも「猫!」と呼ぶ。


それなのに、ビビりの飼い猫は、婆さんを守ろうとしている。


僕たちが婆さんと言い争いになると、どこからともなくやって来て、


僕たちが口を開くタイミングで、「にゃー! にゃー!」とうるさく鳴く。


まるで、「婆さんにそんな暴言はやめろ!」みたいに。


そして、言い争いが止むと、またどこかに消える。


もしかしたら、単に自分がのけ者にされているのが嫌なのかもしれない。


でも、飼い猫には飼い猫なりの、言い分があるようだ。


猫語が分かったら……いいな。いや! 良くない!


飼い主が勝手な解釈をしているから、猫がかわいいのだ。


たぶん。

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