蒼碧の森

作者 霧野

17

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★★★ Excellent!!!

何らかの理由があって眠り続ける人の夢にアクセスし、目醒めへと導く人々の物語です。
不思議な幻想の森にいる少年『蒼一』が主軸となり、夢の世界に迷い込んでしまった人を現へと呼び戻します。

現実には、哀しい瑕疵があるかもしれない。
現実には、愛しい誰かがいるかもしれない。
止まった時間が動き出すまでの物語が、優しいトーンで紡がれていきます。

実は『蒼一』自身にも、小さな体にそぐわない辛い事情があります。
大きな秘密が明らかになり、『蒼一』自身が事実を受け止めて前へ進もうとする姿に、胸が詰まりました。

夢から目醒めた先に、希望あふれる現実の未来を願わずにはいられません。
切なく、温かな読後感でした。

★★★ Excellent!!!

最初の数話で具体的な経緯と筋がわかります。
そこから徐々に掘り下げられていく未知の世界にシンクロしていく感覚が楽しい。健気な主人公たちを取り巻く現実と、決して彼らを見捨てない何かの存在。間違っても予定調和では無いけれど、努力はそれなりに報われる。そんなリアリティが心を動かしてくれました。

★★★ Excellent!!!

ここは、優しい子供たち「蒼一」と「碧」が招待してくれる、不思議な森。
何らかの事情で目を覚まさなくなってしまった誰かの、迷子の心を見つけてお話してくれるのです。
一緒にお話ししたり、遊んだりしているうちに、迷子はもといた場所を思い出します。
そうやって、人を目覚めに導いていく。それが「蒼碧の森」のお仕事。

眠り続ける心。目覚めを待ち続ける、家族の思い。
たくさんの、愛情に満ちた、つらい目に遭った、優しい心があふれます。
傷ついた心を癒すために、夢の世界で奮闘するグループまであるのです(タグ参照・笑)

みんな、誰かのために一生懸命生きている。
だからこの世は怖くない。帰っておいで。

しみじみと語りかける、童話のような作品です。
誰かを思い続ける心の強さと温かさに、感動を覚えずにはいられません。