『眠りの森』。
眠り続けてしまった人の、心が彷徨う場所。
現実に生きる世界では、意思疎通はできませんが、『眠りの森』にアクセスすることによって、意思疎通が図れるというもの。
アクセスできる不思議な能力は、「そうちゃん」という少年が持っています。
そうちゃんが『眠りの森』で、眠ってしまった人を『連れて帰って』くることで、現実に目覚めさせることができます。
まず、この設定が面白いです。
さまざまな事情で、眠り続けてしまった人と、本人を取り巻く人たちの人間模様。
『眠りの森』で繰り広げられる、眠れる人との会話。
謎多き少年、そうちゃんの秘密。
物語が進むに連れ、少しずつ真相が明かされ、読者の心にアプローチするような展開は、素晴らしいの一言です。
何と言っても、最後が素敵です。
美しいとさえ感じるほどの、感動の結末は、感涙もの、必読ものです!
何らかの理由があって眠り続ける人の夢にアクセスし、目醒めへと導く人々の物語です。
不思議な幻想の森にいる少年『蒼一』が主軸となり、夢の世界に迷い込んでしまった人を現へと呼び戻します。
現実には、哀しい瑕疵があるかもしれない。
現実には、愛しい誰かがいるかもしれない。
止まった時間が動き出すまでの物語が、優しいトーンで紡がれていきます。
実は『蒼一』自身にも、小さな体にそぐわない辛い事情があります。
大きな秘密が明らかになり、『蒼一』自身が事実を受け止めて前へ進もうとする姿に、胸が詰まりました。
夢から目醒めた先に、希望あふれる現実の未来を願わずにはいられません。
切なく、温かな読後感でした。
ここは、優しい子供たち「蒼一」と「碧」が招待してくれる、不思議な森。
何らかの事情で目を覚まさなくなってしまった誰かの、迷子の心を見つけてお話してくれるのです。
一緒にお話ししたり、遊んだりしているうちに、迷子はもといた場所を思い出します。
そうやって、人を目覚めに導いていく。それが「蒼碧の森」のお仕事。
眠り続ける心。目覚めを待ち続ける、家族の思い。
たくさんの、愛情に満ちた、つらい目に遭った、優しい心があふれます。
傷ついた心を癒すために、夢の世界で奮闘するグループまであるのです(タグ参照・笑)
みんな、誰かのために一生懸命生きている。
だからこの世は怖くない。帰っておいで。
しみじみと語りかける、童話のような作品です。
誰かを思い続ける心の強さと温かさに、感動を覚えずにはいられません。