『本を読みたくなる小説』

　老舗の出版社である山中出版では年に一度、PFノベル大賞と題された小説の新人賞が開催される。例年千を超える原稿が応募されるこの賞の選考で、ある異変が起こっていた。
　原因となったのはたった一部の応募原稿。『本を読みたくなる小説』と題されたその作品を読んだ者は、ある者はこの世のあらゆる作品を面白いと感じるようになり、またある者は数十時間に及んで他の応募原稿を読み漁るようになった。かつてある出来事をきっかけに編集者としてのキャリアを失ったベテラン編集者の音無は問題となった原稿の謎を探るが……
　読んだものを狂わせる『本を読みたくなる小説』とは一体何なのか。そして、それが生み出された過程とは――