概要
「たすけて」が言えなかった私、もしくは、届かなかったあなたへ、捧ぐ。
人類は増加の一途を辿り地球の地表を埋め尽くしつつも、それなりにご機嫌に暮らしていた。
だが、ご機嫌なまま、死ぬまで生きていられないのが、哀しいかな人間の性、または業である。
……さて、俺たちが生きている時代が、ちょっとそれ以前と異なるのは、
自死を望む者どもに対して、政府に決められた方法によってのみだが、国が、死ぬ権利を与えたことだった……。
だが、ご機嫌なまま、死ぬまで生きていられないのが、哀しいかな人間の性、または業である。
……さて、俺たちが生きている時代が、ちょっとそれ以前と異なるのは、
自死を望む者どもに対して、政府に決められた方法によってのみだが、国が、死ぬ権利を与えたことだった……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「生きるのがツライ」という人に差し出すべきは「死」なのか。それとも…?
自死を選択する権利が認められた時代。生きづらさを抱え、主人公はある選択をするが……
という流れから始まるお話ですが、読んだ後しばらく考えさせられました。
功利主義と能力主義が跋扈し、人がモノ化され、YouTuberが人命軽視発言をし……人々の認識において命が軽くなりつつあるこの時代に、最も必要なのはその流れに対抗するカウンター的な作品です。
「生きるのがツライ」という人に差し出すべきは「死」ではなく、「生きるのが楽になるような力添え」である――
そんな人としての原点を思い出させ、ヒューマニズムの原点に立ち返らせるメッセージ性が、この作品にはあると思いました。
3000字弱の、短い作品で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!副題を改題するなら
『助けて』が言え「なかった」〜ではなく、『助けて』が言え「ない」〜となろうか、この物語の主眼たる、消えゆく救難信号を拾うことであるならば。
いつの世のショートショートもそうであったように、風刺とデカダンを帯びたシニカルな物語に終わらないのがこの物語だろう。なぜか。主人公たちへ「やっぱりか」そして「かわいそうに」と、同情しうるほどのやさしさがあれば、「ふたりがもっと早くに逢えていたら」というくだり、ここで容易に「このふたりだけじゃない」という希望へも目が向くと思える。
……ここで現代日本の自死の既遂者数を論ってもしんどくなるだけかもしれないが、それだけ悲しんで悲しんで悲しみぬいた行く末が、…続きを読む