第14話

 10月、スタジオゴーストのワンマンライブ当日になった。今日までの準備は入念に行ってきた。後は出し切るだけだ。

 僕、奏はフロアの後ろから観客の様子を眺めていた。そこには確かに沢山の人がいて、僕達の音を待ち望んでいる。


 楽屋に戻り、ウォーミングアップをしていると直ぐに時間が来た。

「いよいよだね。」

「出し切るぞ」

「うん、頑張ろ」


 円陣を組んで、ステージに出る。

 いつもより高いステージの上からは横長のフロアにぎゅうぎゅう詰めの顔がこちらを見つめているのが見える。




『はじまりのうた』で始め、そこから新曲を含む15曲を演奏しきった。




 客からは沢山の拍手が送られた。

 しかし、僕の中に強く残ったのは悔いだった。

 二人も同じことを感じている様に見えた。

 楽屋に戻ると、沈黙の時間が続いた。


「、、、なんか、ダメだったね」

 沈黙を破ったのは瑞季だった。

「うん、なんか会場の雰囲気に呑まれてた」

「私もミスがいくつかあったし、調子に乗ってたかも」

「沢山の人に求められてるからって、自分たちが凄くなった訳ではないというか。まあ悔しいな」

「次に向けてまた頑張るしかないよね」




 僕たちは6月に年末の大型フェス出演のためのオーディションに曲を提出していたのだが、スタジオゴーストのライブ直後、それが一次審査を通過しライブ審査に進んだとの連絡が来た。


 それに向けて僕たちは暇さえあれば練習し、予定が合うと3人で合わせ練習を繰り返した。


 その間も天色SUNSETの楽曲は広がり続け、多くの人の生活に浸透していくのだった。

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