第8話
10月になり、日が落ちるのが早くなってきた。僕、奏は学校帰りに浜辺に座り、夕日を眺めていた。
15分ほど前、僕は電車の扉に寄りかかり、空が赤く染まり始めてるのを見ていた。
ふと今日の夕日は綺麗だろうなと思った。
そしてこの夕日は目に焼き付けないと後悔する、そんな衝動に駆られ、電車を降り、片瀬江ノ島駅を出て走って浜辺へとやってきたのだ。
天色SUNSETとかいうバンド名なのに、まだ夕日の曲作ってないな、とふと思いスマホのメモに詞を書き出す。
天色SUNSETは最初の曲『はじまりのうた』を完成させた後、作った曲をネットで配信することにした。琴葉が提案してくれたのだった。
瑞季が持っていた機材でスタジオで録音するということで意見がまとまり、簡単に作った動画と一緒にYouTubeなどでネットに公開した。
そして1ヶ月に一曲のペースで作曲、録音し、公開している。
ちょうどその3曲目のモチーフについて考えているところに、この夕日に出会った。
どのくらい経っただろうか。
東の空が濃い紫色を帯びてきた頃、ようやく歌詞が完成した。曲名は『茜音色』にした。
そのことをいつものようにグループチャットで話す。
奏【新曲の歌詞書いて見たんだけど、どうかな
?】<写真を添付>
瑞季【いいじゃん!タイトルはあかねいろで合ってる?】
奏【そうそう。僕ららしく夕日をモチーフにしてみた】
琴葉【すごい良いね!ラブソング寄りな感じで好き!!】
奏【とりあえず曲もつけて見ようと思う】
瑞季【了解!】
このように僕が曲を提案し、それを話し合い、練習して、スタジオでレコーディングする。
それが毎月、ルーティーンのようになっていた。
また、最近はレコーディングの日だけではなく、毎週日曜日に3人で集まって遊ぶようになっていた。
琴葉だけ家が遠かったりもするが、嫌な顔ひとつせずに来てくれる。
前の日曜は映画を見に行っていた。音楽もののアニメ映画だった。
3人で遊びに行くのは本当に楽しかった。というより、この3人でいる時間が大好きでたまらないのだ。
こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。僕はそう願っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます