第4話

「うーん、、、」

 バンド名を決め始めてから一時間が経ったが、一向に進展していなかった。

「浮かばんな〜」

 瑞季はどこか遠いところを見てぼけっと呟く。


「いっそ運に任せるっていうのは?」

「いいけど、どうやって?」

「音楽をシャッフル再生してその曲名から取るとか?」

「まあ、やってみるか」

 こうして僕、奏の提案により流れた曲名からバンド名をつけることになった。


 瑞季がスマホを取り出し、音楽アプリを開く。そしてお気に入りのプレイリストの再生ボタンを押す。

 最初に流れたのは、、


『君は天然色』


「おお〜」

「名曲だね〜」

「こっからつけるとなると、、天然色とか?」

「なんか物足りないよな〜」

「もう一曲かけてみるかぁ」

 そう言って瑞季は次の曲へスキップする。流れてきたのは、、



『sunset beach』


「Dragon Ashか!」

「オシャレなタイトル来たね」

「これを合わせるとかはありかな?」

「天然色sunsetとかかぁ、、ないよな。」

 瑞季がまた遠くをぼんやりと見ながら言った。


 その時、僕の頭に心地よいフレーズが浮かんだ。

「いや、案外ありかもしれない、、!」

「へ?」

「天色SUNSET」

「あまいろさんせっと?」

「、、うん。」

「いい、、いいかもしれない!」

「いいよね?」

「いい、ね!!!」

「これにするか!」

「おしっ!」

 天色、とは晴天の澄んだ空のような鮮やかな青色のこと。僕が一番好きな空の色だ。SUNSET、つまり夕焼けや黄昏時のこと。江ノ島近くの片瀬西浜でみる夕焼けは、大袈裟だがこの世で一番綺麗だと思っている。


 この二つが合わさった『天色サンセット』なんと美しい響きだろうか。口に出さなかったが、とても嬉しかった。

 瑞季も満足そうな顔をしている。

 すると急に何かを思い出したように口を開いた。

「そういえばバンドメンバーだけど、お互いにインスタとかで探してきて良さそうな人いたら連絡するので大丈夫だよね?」

「うん、全力で探すよ!」

「ありがと!じゃあ、今日はこの辺にするかなぁ」

「そうだね」

 こうして、バンド初の顔合わせ(と言っても二人だけどね)はお開きとなった。



 家に帰りベッドにダイブし、枕に顔を埋める。紙に書いたバンド名を見てバンドを組んだ、と実感して余韻に浸る。

 その時、携帯が震えた。

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