第5話

 携帯を取ると、瑞季からの着信だった。さっき別れたばかりなのになと思い電話に出た。

「おい、カナデ!聞いてくれ!!」

 瑞季が興奮しているのが電話越しでも直ぐに分かった。


「どうしたの?そんなに焦って」

「焦ってはいないけどさ、いたんだよ!ボーカルが!!」

「え!?まじ!?てか、思ったより早いね」

「うん、インスタの弾き語り動画を漁ってたら凄い良い声の女子がいて、もうビビっときちゃったんだよ!」

 瑞季の語気は強まるばかりだ。


「すごいね!それで?」

「連絡を取ったら横浜に住む同い年でバンドやってみたいって!!」

「そんなことある!?」

 僕も驚きを隠せなくなってきた。


「それだけじゃなくてベースも弾けるらしいんだよ!」

「まじかっ!じゃあ、スリーピースで天色SUNSET始動??」

「そうなるね」


 天色SUNSET始動、その言葉を噛み締めながらその後1週間を過ごした。

 その間、3人目のバンドメンバー、横浜の女子校に通う葵琴葉あおいことはとの3人のLINEグループもできて、頻繁に連絡を取り合うようになっていた。

 今後、どのように活動をするかも話し合った。曲は僕、奏の作るオリジナル曲を演奏することになった。


 実は僕は中学生の時から作詞・作曲を細々とやっていた。最初は演奏するのは有名曲のコピー中心という案も出ていたが、2人が僕のオリジナル曲を推してくれたため、新たに曲を作ることになった。



 太陽が一番高いところに登る時間帯、蒸し暑くなってクーラーをつけた。机に向かって、曲のことを考える。歌詞のストックはいくつかある。今まで作ってきた曲をバンド用にアレンジするという手もある。どうしたものか。ふと、頭の中にこの狭い部屋で独りギターを弾く自分の姿が客観的に映し出された。そうか。


 僕は無心で詞を、曲を書いた。気がついた時に外は既に真っ暗になっていた。家の前の国道を車が過ぎていく音だけが聞こえる。

「できた、、」

 曲が完成した。

 タイトルは



『はじまりのうた』

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