息苦しいけど潜っていたい……水底都市のような、温かい常夜へ。

2022/1/28時点の最新話(3-24 美しい世界の子)まで読みました。もちろん今後も追いかける予定です。

最初は「美しくて、綺麗な小説だなぁ」と思いました。常夜の雰囲気が何だか傷や病気を癒す湯治みたいな、温かくてホッと息をつける空間のように思えたからです。作中で出てくる食べ物が美味しそうなのもその印象に一役買っているかも……。
あ、飯テロ注意です。夜中に読むのは……いや、逆に雰囲気に浸れるか。ベッドサイドランプの下で、明日何を食べよう、なんてことを考えるタイミングで読むと最高かもしれません。

記憶を失った状態でやってくる、「現実に傷ついた人たちが訪れる空間」こと、「常夜」。ふんわり温かい終末世界には、住人が「現実世界から持ち込んだ物」が隠れています。この「隠れている」がミソで、常夜の中にあるオブジェクトは大抵誰かが持ち込んだ物になるので持ち主を探すような読み方をすると楽しいです。ほとんどの場合持ち込んだ住人とセットになって紹介されますが、「これは?」というものもちらほら。個人的に気になっているのは、住人たちを襲うアレも誰かが持ち込んだ物なのか……? ということ。

住人、世界、そして主人公にヒロイン、それぞれに「秘密」があります。その秘密が徐々に明らかになっていくところも本作の魅力。次は? 次は? と先が気になります。

温かな終末世界。
絡み合う謎。
過去の記憶。

自分に向き合いたい時や、逆に向き合いすぎて疲れた時。
この小説は、きっと傍にいてくれます。

是非読んでみてください! 

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