孤立した夜闇の世界に降る星は、人々を導く聖灯となるか……?

闇と濃い霧に閉ざされ孤立した世界《常夜》。太陽はのぼらず、荒廃した街並みを月光だけが照らす世界に、零一は全ての記憶を失って流れ着いた。現実世界で大学生だったらしい彼を助けたのは、エリカと名乗る女性。わずかな資源と食料を分け合いつつ、二人は共同生活を始める。

《常夜》に流れ着く人々は、みな現実世界で辛い目に遭い、記憶の一部を失っている。ラジオパーソナリティを務める女子中学生ユアとアユ、記憶に残る料理を屋台で作り続ける“大将“、子どもを喪った主婦……。人々は零一を優しく受け入れてくれる。
しかし、零一の到着と時を同じくして、《常夜》に隕石が降るようになってしまう。毎日同じ時刻に降る隕石は、零一が持ち込んだものと言われるが……? そして、人々を襲う黒い霧のモンスター。

零一は、自分の記憶と現実世界に戻る方法を求めて、《常夜》世界の探索を始める。

     ◇

寂寥感と静けさが感じられる《常夜》世界の描写が素晴らしい。仄暗く孤独な世界観や廃墟が好きな方は、きっと好きになると思います。登場する人々がみな優しくて、互いの心情をいたわりながら暮らす姿が愛おしい。時折登場する料理も美味しそうです。

零一とエリカの過去に何があったのか? 《常夜》の住人は救われるのか? SF風のミステリーがお好きな方にお勧めです。

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