最終話 エルフのジャンと、弟子のマルーイ

 予定通りに日程を消化し、7日目の夕方にはジャンとマルーイはダンジョンを出た。山の端に消えゆく夕日があまりにも眩しくて、それが帰ってきたことを実感させてくれる。

 調査の結果としては、上々であると言えた。"模様替え"直後の迷宮ダンジョンを探索できるというのは滅多にないことで、ジャンの研究ノートがこの1週間で1冊埋まってしまったほどだった。

 5層以降、6、7層はおおむね5層と変わらない、従来の中層の構成を少し弱化させたような、いうなれば中層移行への訓練に適した構成となっていた。魔王出版グランヒルデプレスにもいい土産が出来たというものだ。

 帰路の1,2階層にはジャンの予想通り魔物の配置が完了していて、初日にジャンたちが休憩をとった小部屋にゴブリンが営巣していたりした。今回は討伐はせず、記録だけをとって帰還した。


「さて、エリネールへの報告も終わったところだ。今日は迷宮監視塔ダンジョンモニターに部屋を用意してくれるそうだから、久しぶりにゆっくり休むとしよう」


「はい、ジャン師マスター。その、今回は同行を許していただいて、ありがとうございました。大変勉強になりました」


「なに。マルーイ、君がいてくれて私も大変助かった。もしよければ、これからもよろしく頼むよ」


 ジャンは一週間にわたる探索ですっかり薄汚れた皮手袋を外してそういうと、自身の右手を差し出した。マルーイは戸惑いなくその手を取った。


「喜んで。これからもよろしくお願いします。ジャン師マスター・ジャン


 マルーイは太陽のような笑みを浮かべた。





 後日、ジャンは正式にマルーイを弟子とした。

 これを持ってこのお話の顛末とするが、これ以降の話、もしくはこれ以前の話は、何れ然るべき時が来れば語ることにしよう。

 名残惜しいが今回は、この辺で筆を置かせて頂く。

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