第13話 迷宮探索と、小休止

 時計の針が正午を回る頃には、1階の探索に大体のめどがついたころだった。幸いなことに敵には一切遭遇することが無く、探索はずいぶんと順調に進んでいた。


「どうしたことでしょう、こんなに魔物がいないなんて」


 マルーイはこの快進撃にどこかうすら寒いものを感じているようだったが、小部屋の一室に陣取って簡単な地図を作製マッピングしていたジャンはというと特に気にしている様子ではなかった。


迷宮ダンジョンが形成されて時が浅すぎるから、まだ魔物の分布が完全ではないのだろうね。下層から順に配置されているとすれば、上層1階が迷宮ダンジョンとして完成するのは3日後ほどではないかな」


 羽ペンをクルクル回しながら言うジャンの言葉には説得力があって、小部屋の入り口を守るマルーイも不安のようなものを取り除くことが出来て少し落ち着いた。


「でしたら、帰路には戦闘になるかもしれませんね」


「おそらくはね。なるべく回避を、といいたいが、こうも一本道では難しいだろう。よし、私のほうはひと段落ついた。立哨を変わるから、今のうちに腹に何か入れておきなさい」


 ジャンはすでに真っ黒になりそうな大判紙をきれいに畳むと、マルーイと立場を交代した。小部屋の戸口に立ち、坑道を思わせる薄暗い廊下に注意を払う。もっとも先ほど彼の言ったとおり脅威という脅威は存在しないか排除しているが、不測の事態というのは起こりうる。気を緩めてよいわけではないのだ。


「ジャン師はよろしいのですか? 先程は何も口にされておられなかったようでしたし」


「構わずやってくれていい。エルフは燃費がいいから、朝をしっかりとれば夜までは十分もつのでね」


 その心遣いに、ジャンはやさしく笑んで返した。

 マルーイは背嚢ザックから乾燥肉のスティックと乾パンをとりだし、肉を適量ナイフで削いで乾パンに乗せ、水でふやかしながら食べた。栄養価はそれほどでもないが、手軽に作れて手早く腹におさめられ、さらに腹にたまるので重宝するメニューだった。水分と塩分も摂れる。

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