第11話 迷宮監視塔と、義兄
街を発ったのは正午を少し過ぎた頃であったが、
既に太陽は赤みを帯びて西の空に没する直前である。
「やあ、しばらくぶりだな。
「エリネール・ゲネッズ・レック・レーンか。いきなりきついな」
ジャンは苦笑を浮かべながら会釈をした。
「"庭"を借りたい。
「かまわないよ、好きにするといい。車番には伝えておこう。リュー・リュックは息災か?」
「ああ。心配ならば、顔を見せてやるといい。リューも兄が訪ねてくれば嬉しかろうよ」
ジャンは雑多な申請書にペンを走らせながらエリネールと和やかに会話を交わす。エリネールはリューの兄代わりを長年やっていた男で、然るにジャンの
「
「何か大きな枠組みの中で仕事をするのは、もう疲れたのでね」
エリネールは
「明日の朝に早馬を飛ばそうと思っていたのだが、つい先刻から
「良からぬ? 魔力の蠢いているこれの事かな」
「いかにも。暫くぶりの
そういうエリネールは、いささか興奮した様子だった。
「この調子ならば、明日の朝には中も落ち着こう。内部調査に協力してもらえると助かるのだが」
「上層だけでよければ」
「助かる」
エリネールがジャンに頼みごとをするというのは、ここ50年はなかった大事である。彼も研究者なのだ。この珍事に興味が無いわけがない。
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