第4話 ポーション

 ポーションを作る時の基本は、薬草と聖水。薬草の種類によって効果が変わる。


 ポーションを作る為には、色々な道具が必要だった。薬草をすり潰すための摺鉢や擂粉木。煮詰める為の釜や保存する時の容器など。それぞれ錬金用やポーション用の専用の器具がある。


 ミリアが諦めるしかないと思いかけた時、


(ここ、物置だよね)


 ミリアの部屋だと言う屋根裏部屋は、ガラクタの宝庫だ。それ以来、時間を見つけては箱を開け、中身を確認するミリアだった。


(あった)


 それは、荷物のほとんどを確認し終わり、ミリアが半ば諦めかけていた頃の事。荷物の奥の方で、真新しい錬金道具が入った木箱を見つけた。


(こんなに奥にあったんなら、誰も使わないのよね)


 次の問題は、薬草探し。小屋の近くに行けば沢山あるが、そこまで行くには時間がない。


(あっという間に、小屋まで行ける方法はと、・・あった)


 【ワープ】


 夜中に小屋まで移動して、薬草を採取。急いで屋敷に戻る。屋根裏部屋の奥に作った空間で、実験を繰り返す。


 満足できるポーションが出来上がったのは、半年近く経ってから。奥様達が帰ってきた。


 次は、ポーションの保管場所。出来上がったポーションは、すぐに傷んでしまう。【アイス】の魔法で冷やしているが、うっかりすると氷が溶けている。それにいざと言う時、わざわざ屋根裏部屋まで戻って来れない。


(収納が使える魔法は・・?)



 少しずつ、生活に必要な魔法を覚えて行く。ミリアはその時気付いていなかった。


 魔法には属性があり、人によって使える魔法と使えない魔法がある事を。



 屋敷に来て、初めて奥様から呼び出された。談話室には、奥様と1人の少年がいた。ロバート様だろう。淡いブロンドと碧眼、女の子と見間違える位の美少年だった。


 部屋に入った途端、コップを渡された。


「それを飲みなさい」


 何が入っているのか、コップの中を覗く。濁った紫色の液体が、半分位入っている。


(これ、絶対ヤバいやつ)


「さっさとしなさい」

「母上、この子に飲ませるのですか?」

「そうよ。人で試さなくちゃ、本当の効果は分からないでしょう?」

「でも」

「やめたければ、やめてもいいわよ。どうする?」


 ロバートは暫く悩んでいたが、

「試したいです」


(まじか、何が入ってるのか判れば・・)

 頭の中に声が響いた。


 【鑑定】 を使いますか? Y/N


 何? よく分かんないけど、YES


  初級毒薬。効果、麻痺。致死率、10%


(本気でヤバい、どうしよう)


「何してるの、さっさと飲みなさい」


 ロバート様を見ると、期待で目を輝かせている。えい、一気に飲み干した。喉が焼けつき、体が痺れてきた。床にしゃがみ込み、必死で吐き出そうとする。インベントリから、毒消しのポーションを取り出そうとするが、手足が痺れてきて動けなくなった。


「成功だわ、やっぱりロバートには錬金術の才能があるのね」

「母上、この子に解毒薬を」

「そうね、勿体無いけど仕方ないわね」


 使用人が、ミリアに緑色のポーションを飲ませた。青褪めていた顔に赤みが差し、手足の痺れが治まっていく。



(いざと言う時、インベントリからポーションを出せない事もあるんだ)


 ミリアは、解毒魔法【キアリー】 を覚えた。


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