第8話 図書室

(友達欲しかったなぁ)


 ミリアは売店で買ったパンを、図書室裏のベンチで食べている。食堂に行くと、冷ややかな目線に晒されるし、時折意地悪をされる。

 ここは薄暗くて誰も来ないし、食べ終わってすぐに図書室へいける。アカデミーの図書室は二階建てで、国内でもトップクラスの蔵書量を誇っている。ミリアは時間が出来ると、図書室に入り浸っている。



 ミリアは最近、冒険者と言う職業を知った。殆どは平民だが一部の貴族もなっている冒険者。

 依頼をこなして、お金を稼ぐ。ランクが上がれば収入も増えて、自活できそうだ。13歳になると冒険者ギルドに登録出来て、依頼を受けられる。


 ステータスをオープンすると、職業には未だに“下級メイド” がある。このままだといつかまた、以前のように朝から晩まで屋敷を走り回ることになるだろう。

 ロバートに怪しい薬を飲まされて、グレースの癇癪に振り回される。鞭や箒で叩かれるのもお断りだ。


(1番の問題はお金よね)


 冒険者ギルドに登録するには、お金がかかる。その他にも、防具や武器も必要かもしれない。何より着ていく服がない。ミリアが今持っているのは、学校の制服と寮で着るドレスが一着。お金は、お昼ご飯や文房具を買うのにギリギリ。


(お昼ご飯かぁ)


 ミリアは明日から、お昼を抜く事に決めた。その分を貯める。アカデミーに入るまでは1日2食だったし、1食の日もしょっちゅうだった。今は毎回の食事だって凄い豪華だしね。



 昼休憩と放課後は、図書室で宿題をしたり気になる本を読んだり。


 ある時、1階の奥に立ち入り禁止のドアを見つけた。


(こんなとこにドアってあったっけ?)


 入学してからほぼ毎日通っている図書室で、ある日初めて気が付いたドア。


(怪しいよね。気になるよね)


 周りを見回し、誰もいない事を確認して、こっそりと忍び込む。


(わあ、ここ禁書だらけ)


 タイトルも物々しい。悪魔の手引書、魔界構造学? こっちの棚は、呪い関係。

 部屋の中はかなり広いが、細い通路を挟んで棚が一杯に並んでいる。闇の魔術と書かれた本を開くと、黒い霧が周りを取り囲んで、息が出来なくなった。慌てて本を閉じる。

 次の棚は、吸血鬼に関する本。その次は、人を使役する? 隷属魔法や魅了。その奥は、異世界転生術と異世界人召喚術。



 そっと部屋から出て周りを見回す。良かった、誰もいない。


 今度の休みに、寮の部屋から直接来よう。ミリアは一度行ったところなら、どこでも移動できる。



 後ろを振り返ると、ドアは跡形もなく消えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る