第5話 食堂

 午前の授業を無事に終え、午後の授業の不安を抱えたまま食堂に行った。


 食堂には大勢の生徒がひしめき合い、長い行列が出来ている。ランチはいつも3種類。

 スペシャルセットは量が多くて豪華だが、値段が高い。メインの肉と魚を選べるAセットは男女共に人気が高い。小食のミリアはいつものパスタランチを選んで、空いているテーブルを探していた。


 ミリアが移動するたびに、周りが静かになっていく。


「あの子?」

「またずるしたって」

「さっさと辞めれば良いのに」

「魔道具使って体育館壊したって」


 壁際にぽつんと席が空いている。ミリアはそこに向かって歩いて行ったが、足を引っ掛けられて転びかける。料理を落としかけて、慌てるミリアを見て大笑いする生徒達。


(これからは売店でパンを買おうかな)



「今日はポーションの作成を行います。午前の授業で、やり方は覚えましたね。では、2人ずつのグループを作って」


 Sクラスは17人。予想通り、ミリアが余ってしまった。

「どこかひとつ、3人グループになって貰わないと」

「えー、無理」

「嫌ですわ」


「先生、あの1人でも構いませんか?」

「それは良いけど、大丈夫かしら」

「はい、大丈夫だと思います」


「では、各グループ協力して。始めてください」

 

 ポーション作りなら自信があるミリアだが、今日はなるべく目立たないように、ゆっくりと作業する。


 各机をデイビス先生が回りながら、説明している。

「もっとしっかりすり潰して」

「沸騰させすぎ」


 先生がミリアの元にやってきた。

「作ったことがあるの?」

「はい」


 出来上がったポーションは、綺麗な透明のルビー色に輝いている。

 HP回復用ポーションは赤、MP回復用ポーションは青、解毒用は緑色をしている。透明で色の濃いものの方が、効果が高い。


 出来上がった生徒は、正面の教卓に持って行く。補助教員が品質の鑑定をする。


「初級MPポーション」

「判定不可」

「中級HPポーション」

「判定不能」


「最上級HPポーション?」


 クラス中が騒めく。デイビス先生が教卓に戻り、品質の鑑定をやり直す。


「またオルグレンだよ」

「やぁねえ」


「間違いありません。最上級HPポーションですね」

「ありがとうございます」

「今日準備した材料では、上級ポーションが限界なの。どうやって作ったの?」

「あの、水があまり綺麗じゃなかったので。【ウォーター】 で水を作りました」


「・・、この容器に水を入れてみて?」


 ミリアは、小声で詠唱の振りをしながら、水を精製する。デイビス先生が、水の鑑定を行うと、


 【鑑定】 聖水 LV.2


「光魔法が使えるのね」

「はい」


「光魔法? 珍しくない?」

「また何かやったんじゃ」


(使える魔法は、氷と光・・後ひとつ、何にしよう)


 目が虚になっていくミリアだった。



 ばーん。大きな音を立てて、教室のドアが開かれた。

「デイビス先生! エクストラポーションはありますか?」

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