第3話 第一体育館

 どーん、壁が壊れる大きな音。


「「「「きゃあ」」」」


 女子生徒が悲鳴を上げ、男子生徒は口をぽかんと開いて呆然としている。


「詠唱は?」

「属性何?」

「壁、壊れたじゃん」


 ミリアは慌ていた。今まで本気で魔法を打ったことがなかったので、どのくらいの威力になるのか、想像がつかなかった。まさか、こんな事になるなんて。


 ワドル先生が、ミリアの所へ走って来た。

「今の魔法、属性は?」

 叱られると思ったミリアは、小声で返事をする。

「雷です」

 絶句するワドル先生の所に、補助教員達が走って来た。


「良いですか? 今の魔法は氷属性です。氷に太陽の光が反射した。分かりましたか?」

「? でも」

「後で説明します。それから詠唱は?」

「してません」

「はあ?」

「あの、駄目でしたか?」

「・・それも後で話しましょう。詠唱は小声だったと、良いですね」

「はい」

「放課後、教員室へ来るように」


「では、授業を再開します。次は誰?」

「先生、壁はどうするんですか?」

「後で直します。・・多分」



 教員室へ行くと、入り口で待っていたワドル先生に腕を取られて、学長室へ連れて行かれた。


「学長、ミリア・オルグレンを連れて来ました」


「今日は中々面白い授業になったようですね」

「あの、申し訳ありません。壁は直します」

「直せるのですか?」

「やった事はないですが、多分直せると思います」


「ワドル先生。ミリアの入学試験の結果見ましたか?」

「はい、びっくりしました。間違いでは?」

「ですね。実は私もそう思っていました。偶々機械のトラブルがあったとか」

「学長、ほんとにそう思ってたんですか?」


「いいえ」

 学長は楽しそうに笑っている。


「久々に面白い事になりそうだと思いました。はい」


 ミリアは訳がわからず、1人ついて行けていない。


「ミリア、10歳の時教会でなんと言われましたか?」

「行ってないので分かりません」

「はあ?」

 ワドル先生がびっくりしている。

「そんな事があるんですか?」


「あったみたいですね。平民の中には偶にあるようですが、貴族では珍しいですねぇ」

「あの、すみません。私は貴族ではないので」


 学長がキョトンとしている。

「そこからですか」


「あなたはアバディーン侯爵の実子ですよ」


 今度は、ミリアがキョトンとした。


 学長の説明によると、アバディーン前侯爵は、亡くなったミリアの母。

ロバートは、ミリアの母の妹とジョージ・オルグレンの息子。

ミリアは、ジョージ・オルグレンの娘。

グレースは、ジョージ・オルグレンとメリッサの娘。


「つまり旦那様ジョージ・オルグレンは、別々の人と3人の子供を作ったと言う事ですか?」

「その通りです。次の侯爵はミリアです」

旦那様ジョージ・オルグレンは?」

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