アカデミー、前期

第1話 入学式

「嘘でしょう、何かの間違いだわ」

「仕方ないでしょう? アカデミーから連絡が来たんだから」


 アカデミーの入学試験の結果が届いた。ミリアは首席で、新入生代表の挨拶をすると書かれている。


あいつミリアが挨拶なんて、私の立場はどうなるのよ」


「ミリア、辞退なさい」

「・・はい」

「今年はライリー第三王子殿下も入学なさるの。殿下を差し置いてご挨拶だなんて、無礼が過ぎますからね」

「はい」



 入学式当日。ミリアは徒歩で、学園までやって来た。手には大きな鞄を持っている。


(荷物を寮に預けて来なくちゃ)


 正門を抜けて、受付に向かう。集合時間よりかなり早いが、既にかなりの人集りが出来ている。


 受付の列に並ぶと、すぐ前の生徒がチラチラと、ミリアと鞄を見比べている。


「入学許可証を。ミリア・オルグレンさんね。これがSクラスの席次表とアカデミーの地図。式の開始に遅れないように」

「あの、寮に荷物を置いて来たいんですが」

「寮の場所は地図に載ってるから、行くなら急いで。遅刻したら減点になるから」


 列を離れ、地図を確認する。寮は校舎の右手。身体強化をかけて、走って行く。


 寮の受付に荷物を預け、アカデミーに戻った。席次表を確認すると、Sクラスの一番前。隣の席が空いている。


 式が始まる直前、男子学生ライリー第三王子殿下が隣に座った。


「初めまして。君がミリア・オルグレン?」

「はい」

「次席入学のライリー・クレメンス。宜しく」

「宜しくお願いします」



 入学式がはじまった。学長挨拶に続き、来賓と在校生代表の祝辞。在校生代表は、スティーブ第二王子殿下。その後、新入生挨拶が行われて、教室に移動した。


 ミリアは、教室の一番後ろの端に座った。生徒達は既にグループが出来ていて、固まって座り仲良く話をしている。


「全員揃ってるか? 俺が1年間君達を担当するクレイグ・シーモアだ。専攻は数学と体術。主に剣だな。数学は基本7教科の1つだから、しっかり勉強するように。

Sクラスは最大20名。試験や提出課題の内容によっては、Aクラスに即移動になる。気を引き締めて頑張るように。授業は明日から、質問がなければ解散だ」


 1人の生徒が手を挙げた。


「あの。今回の試験で、不正をした人がいるって噂は本当ですか?」

「私も聞きましたわ」

「私もです」


 クラスの殆どの生徒が知っているようだ、


「ただの噂だ。うちの試験会場には、いくつもの魔道具が設置されている。不正はあり得ん」


「でも」

「ただの噂だ。不正入学してついてこれるほど、アカデミーは緩くないから覚悟しろよ。では解散」


 生徒達がバラバラと立ち上がるが、チラチラとミリアを見ている。


(私が噂の元なの? まさかね)


「あの、オルグレンさん。ちょっと良いかしら」

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