エピソード18   高級な車

 アレクに案内された先にはガレージがあり、ピカピカに光る車が並べられていた。車種は様々でミニバンタイプからスポーツカー、セダンタイプ・・・等々。そしてアレクが借りた車は・・。


「この車を借りたんだ。」


アレクが指さした車は黒塗りのSUV車だった。勿論四輪駆動は当たり前。


「さあ、乗れよ。リア。」


アレクが自然な動きで車のドアを開けた。


「ありがとう、紳士なんだね。」


にこりと笑みを浮かべるとアレクは言った。


「別に、こんな事は普通だろう?お前を良く乗せてくれる男はこういう事しないのか?」


「う~ん・・・無いかな?」


だって私を乗せてくれるのは兄だからね・・・兄妹じゃそんな事あんまりしないと思うけど。


「ふ~ん、そっか・・無いのか。」


しかし何故かアレクは嬉しそうに言う。


「?」


思わず首を傾げるとアレクが言った。


「まあ、いいか、乗れよ、リア。」


「う、うん・・・。」


言われたまま助手席に乗り込み、シートベルトを締め、改めて車の内部を観察する。


「な、なんか・・ちょっと高級そうだね・・。」


車の事にあまり詳しくない私でもよく分る。だってこの車・・内装がすごく立派なんだもの。シートはレザー素材だし、蛍光塗料でも塗ってあるのか、車内はぼんやりと青く光っている。いやはや・・高級過ぎて全く落ち着けない空間だ。


「よし、それじゃ行くか。リア。」


運転席に乗り込み、シートベルトを締めたアレクが言う。


「は、はい・・・よろしくお願いします・・・。」


高級車で微妙な緊張感を感じつつ、私はアレクに挨拶をした。


「?何だ、そりゃ・・・。ま、いいか。それじゃ行こう。」


そしてアレクはアクセルを踏んだ―。




****



「キャーッ!最っ高!」


窓から見えるすっきり晴れ渡る青い空。道路の両脇は緑の草原が広がり、ヤシの木が生い茂っている。そしてその奥に見える美しいエメラルドグリーンの海。

もう私の興奮の度合いはマックスになろうとしていた。


「ハハハハ・・・。そんなにこの島の景色が気に入ったか?」


ハンドルを握ったアレクが笑いながら聞いて来る。


「うん、勿論だよっ!だって、こんなにきれいな景色なんだよ?興奮しない方が無理だってばっ!」


窓の外を見ていた私はアレクに振り返ると言った。


「そうか・・そんなにいいのなら・・SUV車じゃなくてオープンカーを借りれば良かったか・・?」


「え?オープンカーなんかあったっけ?」


「ああ、さっき行ったガレージの奥にはまた別なガレージがあってな、そこにはオープンカーもあったんだよ。」


「へぇ~それはいいことを聞いた。それじゃ明日さっそくレンタルしてドライブしてみようかな・・・。」


「そうだな、何時に出掛けようか?」


突如アレクが尋ねてきた。


「え?」


「何だよ・・その顔は・・・あ?もしかしてお前、誰か外の男と出かけるつもりだったのか?」


アレクが不満そうに言ってきた。


「いやいや・・・まさか、そんなはずないでしょう?私が親しくしてるのって・・・アレクぐらいしかいないから。・・・1人で行こうと思っていたんだよ。」


「・・・何で1人でドライブに行こうと思ったんだよ?」


「だってさぁ・・・誘えそうな人、ここにはいないから・・。」


「おい?ここにいるだろう?」


アレクはイライラした口調で私を見た。


「だ、だから・・アレクと出かけるのは今日までだから。さっきも言ったとおり、私と関わると・・皆から白い目で見られると思うよ?きっと今頃は私の悪口で盛り上がってるだろうな~・・。」


そして私は再び窓の外に目を向けるのだった―。

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