エピソード15 買い物の誘い

 アレクと一緒に3階へ行き、私は自分の部屋のカードキーを差し込み、ドアノブに手をかけた。すると背後に立っていたアレクが言う。


「いいか?あとで必ず迎えに行くから・・・居留守使うなよ?」


振り向くとアレクに言った。


「居留守なんか使うはずないでしょう?だって王子様のスケジュールを教えてくれるって言うんだもの。大丈夫、必ずアレクに付き合うからさ?」


「・・・・。」


しかし、何故かアレクは不満げに私を見ている。


「どうしたの?」


小首を傾げてみつめると、フイと視線を反らせてアレクは言った。


「別に、何でもない。1時間程したら迎えに来るから。」


「え?1時間後って・・・まだ11時前になるけど?そんなに早くからランチに行くの?」


するとアレクは髪をくしゃりとかき上げて言った。


「・・・買い物がしたいんだよ。付き合ってくれ。」


「え?ここって・・・買い物出来る場所があったの?!てっきりホテルだけかと思ったっ!」


思わず目を見張ると逆にアレクに驚かれてしまった。


「はぁ・・・?お、お前・・何言ってるんだ?この島の事・・・何もしらないのか?」


「う、うん・・お恥ずかしながら・・。」


もじもじしながら言う。だって・・・本音を言えばこんな島・・来たくはなかったんだもの。集まってくるのはきっと子息令嬢のセレブ達ばかり。絶対に自分が浮いた存在になると思っていたから・・・。


「まあいい・・。スマホ持ってるだろう?それでこの島の事、少しは検索しておいた方がいかもしれない。まぁ、部屋にはPCもあってWi-Fiも使えるから・・それで調べたっていいしな。それじゃ、また後で。」


そう言うと、くるりと背を向けてアレクは自分の部屋のカードキーを差し込むとドアを開けて部屋へ入ってしまった。


「・・・買い物って・・・何買うんだろう?ま、いっか。久々のウィンドウショッピングも楽しそうだし。」


そして私も部屋の中へ入った。



 波の音に部屋から吹き込んでくる潮風・・・何て気分がいいんだろう。私は鼻歌を歌いながら、キャリーケースの中身をベッドの上に取り出して衣類を部屋に備え付けの真っ白なクローゼットにしまっていく。私が島に持ってきたのはTシャツやデニムのジーンズがほとんどでほんの僅かしかワンピースは持ってきていない。どんな格好をすればよいか分からなかったし・・第一安物の服しかもっていないからだ。


「ん?待てよ。ここはセレブ達の集まる島だからな・・・ひょっとしてパーティーとかも行われるかも・・ど、どうしよう!そんな服持ってないよ。パーティーは欠席すればいいかな・・・。」


あ・・・・でも駄目だ。私は王子様とフォスティーヌの前で悪役令嬢を演じなければならないのだから、欠席なんてさせてくれないだろうな・・。


「仕方ない・・・そうなったときはフォスティーヌの服をかりればいいか・・・。」


ぶつぶつ言いながら私は全ての服をしまい終えると、部屋に設置してあるノートパソコンを開いた。

電源をいれると、すぐにウィンドウズの画面が表示される。


「え?パスワードいれなくていいんだ。何とも不用心な・・・・。」


とりあえず検索画面を表示させ、キーワードの欄に『リゾート島』と入力してみると、ずらりと様々な情報が表示された。


「え・・・と、どれがこの島の情報なのかな・・・。あ、あった!これだ!」


該当する情報ページを見つけ、クリックするとすぐに画面が切り替わる。


「うわっ!反応早い!サクサク動くよ。ネット配信動画も見放題みたいだし・・夜は映画でも見ようかな・・。え・・?」


私はある説明文で動きを止めた―。

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