エピソード3 いきなり軽蔑される私
『 キャ~ッ!! 』
この2人がタラップに降り立った途端、女性人たちから黄色い感性が沸き上がった。
え?何?何?一体どういう事なのよ?私はさっぱり訳が分からず、隣でキャアキャア騒いでいるフォスティーヌに尋ねた。
「ねえ、フォスティーヌ。彼らは一体何者なの?何故貴女を含め、他の皆も騒いでいるの?」
するとフォスティーヌは言った。
「当然じゃない。このサマースクールに参加した女性たちのお目当てはあの彼なのよ?ほら、最初に飛行機から出てきた男性!」
フォスティーヌの視線は、もう栗毛色の柔らかい髪の男性にくぎ付けになっていた。確かに優しそうで素敵な男性に見えるけど、私としてはその後ろに控えているダークブロンドの髪のちょっとワイルド系な男性の方が好みだけどな・・。
「それで?あの男性は一体誰なの?」
「リアンナ・・貴女。本当に何も知らないでこのサマースクールに参加したのねえ・・。」
フォスティーヌは何故か溜息をつきながら言う。しかし・・・そんな事は知らなくて当然じゃないの?だって私はこのサマースクールの趣旨をろくに知らないまま、半ば強制的にフォスティーヌの意中の男性の前で悪役令嬢になり切り、彼女を虐めて同情を買わせる、いわば当て馬要因として参加させられたようなものなのだから。詳しい事情など知る由もないじゃないの。
・・と思ったが、私は口には出さなかった。
「彼はね・・・レオナード・キャンベル。ダイヤモンド鉱山を持つ、フランク王国の第一王子様なのよ。」
「嘘っ?!王子様なのっ?!」
私はつい、大声で言ってしまい・・女性たちと・・よりにもよってレオナード王子とその背後にいるワイルド系男性に見られてしまった。
「まあ・・何かしら・・あの低俗な格好は・・・。」
「本当にあれで貴族令嬢なの・・?」
「品位が劣る服装ね・・。」
「あの姿で参加者の男性たちを堕とすつもりなのね・・?」
等々・・・酷い言われようだ。しかも彼女たちと私の間には、まあまあの距離が空いているのに、こんなにビンビンに聞こえてくると言う事は・・わざと私に聞こえよがしに言ってるんだろうな・・・。ああ、サマースクール初日から同性達に目を付けられる私って一体・・・。いや、それだけではない。男性参加者たちも何だか私の事を興味津々の目で見ている・・・。ううっ!絶対にこの服装のせいだっ!絶対にホテルに着いたら着替えてやるんだからっ!
タラップから滑走路に降り立ったレオナード王子が突然小型マイクを取り出すと言った。
『 皆さん、本日は私の企画主催したサマースクールに参加していただき、感謝致します。御承知の通り、このサマースクールは誰でもが参加できるものではありません。家柄や・・・地位、資産・・・そして学業も優秀である人物のみが参加出来るのです。それだけではありません。一番重要なのは自分たちには恋人や婚約者がいないことが絶対条件です。何故ならこのサマースクールは令息令嬢たちの出会いの場・・将来の素晴らしい伴侶を見つける為に開催されたスクールだからです。では、皆さん。まずはホテルへ向かいましょう。こちらにバスを御用意致しました。さあ、どうぞ。』
レオナード王子の言葉と同時に、豪華なマイクロバスが滑走路の向こう側からやってきた。そしてレオナード王子の前で停車した。
すると・・目の色を変えた令嬢達達は自分たちの1カ月分とは思えない量のトランクケースを残したまま、バスに向かって駆けよって行く。そしてあっという間にレオナード王子を取り囲む。
「大変っ!みんなに先を越されちゃうっ!」
そしてフォスティーヌ迄もが荷物を放り出したまま、マイクロバスに向かって駆けだして行った。
「あ・・・。」
全く・・・ほかの貴族令嬢たちはお付きの人?がいるのか荷物を運ぶ大人たちがいるけれども、あいにく私たちは2人だけでこのリゾート島に降り立って、プライベートジェットは飛び立っていってしまっている。
「もう・・荷物を忘れているじゃないの・・・。」
私はブツブツ言いながら2人分の大きなトランクケースを引っ張りながらマイクロバスへ運んでいると突然数人の男性たちに取り囲まれた―。
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