エピソード4 ナンパ?
「重そうだね?俺たちが運んであげるよ。」
1人のチャラそうな巻き毛の男が私の前に立ちはだかると言った。
「い、いえ・・・間に合ってますから・・。」
じりじり後ずさっていると、突然背後から声がかかる。
「そうそう、女の子1人じゃ、重いでしょう?」
私の背後から声を掛けてきたのは黒髪の少しヤバ気な雰囲気を醸し出した男だ。
「ひゃああっ!」
うなじに男の息がかかり、思わず悲鳴を上げてしまった。
「ほら、貸しなって。」
サングラスを被った男がとうとう私の引っ張っていたキャリーケースを奪ってしまった。冗談じゃないっ!こんな男たちに関わったら・・何か色々タダではすまない気がする。例えば貞操の危機・・・とか?だって、彼らの私を見る視線がなんか、ヤバイんだものっ!だからこんな格好したくなかったのよ~!!
「か、返して下さい・・・よっ!」
お願いする形でキャリーケースを取り返そうと思い・・途中で私は今から悪役令嬢を演じなければならない事を思い出し、慌てて強気な態度に出てみるも、中途半端な言い方になってしまった。
「まあ、いいからいから。ほら・・・あの女の子たちを見てごらんよ・・。」
サングラスをかけた男が私に言う。
「み~んな、あの王子様目当てで来てるってわけよ。俺らなんて頭数だけが目的で集められたみたいなものなんだよな。」
白けた口調で黒髪男が言う。
「そうそう。でもさぁ・・・君はあの娘たちとはタイプが違うみたいじゃん?王子様には興味なさそうだし・・・。」
巻き毛の男が顔を近づけてきた。こ、このままでは・・・彼らに持ち帰られてしまうかもしれないっ!
「わ、悪いけどっ!わ・・私だって目的があってきたんだからねっ!」
わざと強気な態度に出る。
「へえ~・・目的って・・何の・・?」
黒髪男が腰に腕を当てて言う。
「そ、それは・・・。」
どうしよう、誰か・・誰か・・・。視線をキョロキョロ動かし、誰か助けてくれそうな人物がいないか探していた時、偶然荷物を運んでバスに詰め込んでいる王子様の付き人さんと目があった。
「そ、そう!彼よっ!」
失礼とは思いつつ、私は王子様の付き人さんを指さした。
「わ、私は・・彼を狙ってるのよっ!」
するとその声が聞こえたのか付き人さんはギョッとした顔で私を見たが、3人の男たちに囲まれている私を見て何か察知してくれたようだ。
そしてこちらへ向かって歩いて来ると取り囲んでいる男たちに言った。
「悪いが、彼女を離してくれないか?」
「へ?何だよ。俺たちが先に声を掛けたんだぜ?」
サングラス男が言う。
「君たちは・・・この会の趣旨をまだ理解していないのか?規約に書いてあることを忘れているわけじゃないだろうな?嫌がる女性を無理やり誘うと、違法行為となって『脱落』扱いになり、強制的にこの島から追い出されるって規約をまさか忘れていないだろうな?」
付き人さんはジロリと迫力ある視線で3人の男たちを交互に見た。
「う・・・。」
「わ、わかったよ・・。」
「荷物を返せばいいんだろう・・?」
彼らは余程この島から追い出されるのが嫌なのか、付き人さんの言う事を聞いて、すごすごとバスに乗り込んでいく。
「あ、あの・・・ありがとうございます・・・。おかげさまで助かりました・・。」
ペコリと頭を下げると付き人さんは言った。
「・・・派手な格好をしている割には随分しおらしいんだな?だが・・そんな恰好していれば男に取り囲れても同情は出来ない、自業自得だな。」
「はい・・・自分でもそう思います・・・。」
思わず、しゅんとなる。
「え?」
すると付き人さんは意外そうな目で私を見た。いけないっ!私は悪役令嬢だったんだ。しかも彼は王子の付き人・・・彼の前でも私は悪女を演じなければならないんだ!
「な・・・何よ。どんな格好したって・・わ、私の自由でしょう?」
さりげなく今にもおへそが見えそうなTシャツを下に引っ張りながら、強がって見せる。
「ふ~ん・・・。まあ、いい。でも次からは気を付けた方がいいだろう。」
付き人さんは言うと、私たちの分のキャリーケースを持つとマイクロバスへと詰め込んでくれるのだった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます