エピソード41 再会
「あの・・すみません。ちょとよろしいですか?」
ボックス席の黒髪男性に声を掛けた。すると彼は私が声を掛けてくるのを待っていたかのように笑顔をむけた。
「やあ・・美しいお嬢さん。僕のお酒、気に入って頂けましたか?」
「いえ、そんなんじゃありません。見ず知らずの人にお酒をご馳走してもらうわけにはいかないので返しにきました。」
そしてテーブルの上にカクテルグラスをトンと置く。
「おや・・・気に入りませんでしたか?お酒をたしなむ女性なら・・・誰でも好きなスクリュードライバーですよ?」
スクリュードライバー・・・。その名前を聞きき・・自然に眉をひそめてしまった。
「レディキラー」とも言われるアルコール度数の強いお酒・・男性が女性をお持ち帰りする時に使われるお酒としても有名。カクテル言葉は「あなたに心を奪われた」。
「私は・・・こんなに度数が高いカクテルは好きじゃないんです。ご自分で飲んでください。」
そして肩をすくめて先ほどの自分の席に戻ろうとした時・・。
「ねぇ、待ってよ。」
突然右手首を掴まれた。
「折角僕の席に来てくれたんだから・・2人で一緒に飲もうよ。」
そして艶っぽい瞳で見つめてくる。
やっぱり・・最初からこれが目的だったんだ。お酒をプレゼントし・・返しに来た女性を口説き、お持ち帰りする・・あまりにもありきたりな手法だ。
「結構です。私は人と待ち合わせをしているので。」
「そんなの嘘だろう?俺・・君がここのバーに入ってきた時から・・ずっと見ていたけど、もう30分以上ひとりだったじゃない。」
「そ、それは・・!」
何て事だろう。この男・・・私がバーに姿を現した時からずっと・・私の様子をうかがっていたんだ・・・!
握り締められたを振りほどこうとしても男性は手を緩めてくれない。
「・・・離して・・!」
「嫌だね。」
その時・・・。
「おいっ!その手を放せっ!」
背後で聞き覚えのある声が聞こえ・・振り向くとそこにはサングラスをかけたアレクの姿があった。
「何だよ・・?お前は。」
「俺のことはどうでもいい。そんな事よりもその手を放すんだ。さもなくば・・。」
「さもなくば・・・何だよ?」
男性は挑発的に笑みをうかべ・・そこをアレクに顔面を殴りつけられ・・ボックス席に伸びてしまった。そして私は恐る恐るアレクの顔を見つめると言った。
「あ・・レ・・レオナード様・・。助けていただいて・・どうもありがとうございました・・・。」
「レオナード・・・・。」
すると何故かアレクはその名前を口にし・・・悲し気な顔で私を見る。だけど・・・もっと辛いのは私の方なのに・・!
アレクに頭を下げるとバーを逃げるように駆けだした。
「リアッ!待ってくれっ!」
アレクの声が追いかけてくる。リア・・そんなふうに私を呼んでくれるのはアレクだけだった。
店の外を出たところで肩を掴まれ、私は背後から抱きしめられた。
「リア・・・頼む・・・!今度はもう・・俺から逃げないでくれ・・っ!」
アレクは言うと益々強く抱き占め、私の髪に顔をうずめてくる。
「いや・・は、離して下さい・・。」
心臓がドキドキして口から飛び出そうだ。
「駄目だ。話を聞いてくれるまでは・・絶対に離さない・・!」
「わ・・・分かりました・・。」
頷くと・・ようやくアレクは私を離し・・・溜息をつくと言った。
「会いたかった・・・リア。3年間・・・ずっとお前に会いたいと願っていた・・。」
「嘘は・・言わないで下さい・・・貴方は侯爵家の女性と結婚されるんですよね?これ以上・・・からかうのはやめて下さい・・!」
そして私は震える手をギュッと握り締めた―。
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